がん家系かどうか気になりませんか
時々、「母に癌が見つかって」「祖母が癌で亡くなっていて」のように、近い家族に癌患者さんがいると、ご自身の癌を心配される方がいらっしゃいます。
そこで、今回は
がん家系
について説明したいと思います。
婦人科的に「がん家系」として以前話題になったのは、アンジェリーナジョリーさんが癌予防のために乳房を切除した、というニュースが流れた時でした。
乳がんと卵巣癌は密接に関係していることがあり、
遺伝性乳癌卵巣癌症候群
と言って、家系内に乳がんや卵巣癌などが好発し、遺伝子変異のある方は70歳までに卵巣癌になる確率が40%に上る、というものです。
そのため、ご家族に癌の方がどれだけいるか、というのは非常に重要な情報になってきます。
あまり離れた血縁の方の情報までは不要なのですが、少なくとも第1度近親者(兄弟姉妹、親、子)と第2度近親者(祖父母、おじ/おば、めい/おい)の情報は大切になってきます。
そして、次のような方々は、乳がんや卵巣癌になる遺伝子を持っている可能性が20~25%以上あり、遺伝学的リスク評価を考えてもいいかもしれません。
・過去に乳がんと卵巣癌になっている方
・卵巣がんになっていて、第1度/第2度近親者に卵巣癌か閉経前乳がんになった方がいる場合
・50歳以下で乳がんになった方
・第1度/第2度近親者に卵巣癌になった方がいる場合
こういった方々の遺伝学的リスク評価としては、血液検査でDNAを調べるのですが、保険が使えないので自費での検査になってきます。
費用に関しては、各病院で異なってくるため、以下のサイトでお近くの病院を探してみてください。
特に「卵巣癌」に関しては、よくある「婦人科がん検診」の対象にはなっていないことに注意してください。
というのも、卵巣癌自体を効果的に見つける検診方法というのがないのです。
「お腹が大きくなってきた」といって受診されたときには、もうすでに卵巣癌がかなり進んだ状態で・・・・という見つかり方をすることが多く、「毎年子宮がん検診を受けていたのに・・・」と言われることもあります。
卵巣癌は、早期発見が非常に難しい病気なのです。
ただ、遺伝子検査をして、遺伝子変異のあった方を対象に前もって卵巣・卵管を摘出した場合、卵巣がんと卵管がんのリスクが5分の1に減った、というデータがあります。
(Rebeck TR,Kauff ND,Domchek SM:Meta-analysis of risk reduction estimates associated with risk-reducing salpingo-oophorectomy in BRCA1 or BRCA2 mutation carriers. J Natl Cancer Inst 2009)
アメリカでは、遺伝子変異のある方は、前もって卵巣・卵管を摘出した方がいいと言われており、仮に手術をしない場合でも、ピルを6年以上飲むことで卵巣癌のリスクを4割減らせる、とされています。
(Whittemore AS, et al.: Oral contraceptive use and ovarian cancer risk among carriers of BRCA1 or BRCA2 mutations.)
卵巣・卵管を前って手術することは、妊娠・出産に関わることですし、更年期症状にも関わってきます。また、保険では認められない手術なので、自費で数十万円の金額がかかることにもなります。
ピルも確率は低いですが副作用があります。
どの方法を選ぶにしても、デメリットは伴いますので、家系的に自分が癌のリスクが高いかどうかをチェックするところから始めてみてくださいね。