平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

赤ちゃんが突然亡くなるということ

基本的に産婦人科というのは、すべての診療科目の中で、唯一

 

おめでとうございます

 

と言える幸せな科だと言われています。

 

実際、外来や病棟でも妊娠・出産の幸せな空気が流れていますし、それが産婦人科医になることを決意した大きな理由でもあったりします。

 

しかし、そんな産婦人科でも悲しい瞬間はあります。

 

流産や死産というのは、我々がどれだけ頑張っても、避けられないこととして起きてしまいます。

 

もう何年も前のことですが、2人目を妊娠したお母さんの妊婦検診を担当していました。

 

妊娠初期の頃から、何も問題はなく、通常の経過をたどっていました。

 

毎回の妊娠検診には、お姉ちゃんになる予定の幼稚園の子がいつも一緒に来ていて、お母さんと一緒に超音波の検査を見ながら、ニコニコしていました。

 

検診が終わると、「ばいばーい」と手を振って診察室を出て行く、とても癒される妊婦検診でした。

 

 

そんな何事もなかった妊婦検診でしたが、お母さんのお腹がかなり大きくなった頃、いつものように超音波の機械をお腹に当てると、そこには動いているはずの心臓が見つかりませんでした。

 

お母さんはもちろんのこと、こちらも全く予想だにしていません。

 

しばらく沈黙が流れます。こちらもかける言葉が見つかりません。

 

やっと「普段と変わったことはありませんでしたか?」と聞くことができました。

 

「そういえば昨日から胎動が弱くて」

 

そういうお母さんの目も、超音波検査の画面を見て、いつもなら動いている心臓が見えないことに、うすうす気づいていました。

 

「ここが赤ちゃんの心臓なんですが、、、もう動いてないんです、、、」

 

 

正直、何て表現をしたか、正確には覚えていないのですが、赤ちゃんの心臓が止まっていることをお母さんに伝えました。

 

 

悲しみの表し方は本当に人それぞれで、そのお母さんはただ静かに涙を浮かべてうなづくだけでした。

 

一緒に来ていた幼稚園のお姉ちゃんをギュッと抱きしめて、こちらの説明を聞いたお母さんは、そのまま入院ということになりました。

 

 

赤ちゃん自身の体の大きさは、もう産まれてもいいくらいの大きさになっていました。そのため、誘発剤を使って、分娩してもらう形になりました。

 

ご両親、ご主人、幼稚園のお姉ちゃんに囲まれて、赤ちゃんを産んでもらいました。

 

何時間かした後に病室を訪ねると、幼稚園のお姉ちゃんが亡くなった赤ちゃんを抱っこして話しかけていて、私には何も言葉をかけることができませんでした。

 

とても悲しい出来事でしたが、お母さん、ご両親、ご主人、幼稚園のお姉ちゃん、そして亡くなった赤ちゃん、家族みんなで過ごしている暖かな空気が流れていました。

 

 

 

 

いつも幸せな科である反面、とても辛いことがあると、何年経っても心に残っています。

 

こちらに何かできることはなかったのか、と。

 

そんなことを、ふとした時に思い出しています。