子宮奇形と妊娠の関係
普段の外来で超音波検査をしていると、ふいに
子宮が二つある
という患者さんを診ることがあります。
本来は子宮は一つなのですが、まだ生まれる前、お母さんのおなかの中にいる時期に臓器が作られる段階で、子宮が二つになってしまうことがあるのです。
これは生まれながらのものなので、生まれた後に何かをしたからそうなる、という関係性はありません。
また、ほとんど自覚症状も出ないため、何かのきっかけで婦人科を受診した時に、たまたま見つかる、ということがほとんどです。
この子宮が二つある、という状況は、大きく分けて
単頚双角子宮
双頚双角子宮
の二つに分かれます。
「単頚」というのは、子宮の出口の部分が一つで、「子宮体部」という赤ちゃんが妊娠する部分が二つに分かれているタイプです。
「双頚」というのは、子宮の出口の部分も子宮体部も二つあるので、完全に子宮が二個ある、というイメージです。
この「単頚」か「双頚」かで、妊娠した時の経過が大きく異なってきます。
それを示した論文がこちら
73人の双角子宮の女性が妊娠し、22週以降に出産した場合の結果を比べてみました。
まず、単頚子宮の場合は、早産率が27%、胎盤早期剥離が14%になりました。
子宮奇形のない比較した群では早産率:5%、胎盤早期剥離:0.7%だったので、リスクの高さがわかるかと思います。
そして、双頚子宮の場合は、帝王切開率が90%近くになりました。これは、子宮の出口が二つあるために、赤ちゃんの通り道である子宮の出口がスペース的に上手く広がらないために、帝王切開になっている可能性が考えられます。
また別の論文では
単頚双角子宮の場合は、早産率:8%
双頚双角子宮の場合は、早産率:30%
特に何もない方では早産率:0.8%
というデータが出ており、超音波検査で子宮の出口の長さを計測することで、早産予想が可能となっています。
もともと、お腹が張ったりして早産の心配があると、超音波で子宮の出口の長さを測るので、子宮奇形の場合には特に注意深く様子を見る必要がある、ということですね。
以上、子宮奇形と妊娠に関するデータを調べてみました。
今回紹介した論文は、妊婦さんの人数がそれほど多くないですし、早産率に関しては国によってまちまちなので、日本での確実なデータとして考えるのには問題がありますが、それでも子宮奇形がある場合には、早産になる可能性を考えて、注意深く診察をしていく必要があると言えます。