平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

医者が文章を書く、ということ

先日、ある健康サイトの監修を頼まれました。

 

少し前にいい加減な情報を書いた記事を量産して問題になったサイトがあって、あまり「健康サイト」に対する良いイメージはなかったのが正直なところです。

 

また、マスコミなど取材をする立場の人達は、取材された人の考えを伝えるのが目的ではなく、取材した側の伝えたい内容に沿うように勝手に監修するのが仕事だと個人的には思っています。

 

その点が不安だったのですが、こちらで監修した内容をしっかり反映してくれる、との話をいただき、ひとまず監修させてもらうことにしました。

 

まず驚いたのは、1から記事を作り上げるのではなく、すでに誰が書いたのかわからないような「医療記事」が何十件もあったということ。

 

最近、ちょっと調べ物をしようと検索すると、「一般サイト」ばかり無数に出てくる理由が何となくわかりました。

 

最初の数件は、それほど問題になるような内容はありませんでした。もちろん、素人さんが書いたんだろうな、という簡単な用語の間違いは沢山あって、そこを細々と修正していたのですが、、、

 

徐々に、「そんなこと、どこに書いてあったの?」っていう内容がチラホラ目立つようになりました。

 

正直、別に「素人さん」が書いた記事なら、いい加減な事が書いてあっても、「実害」がなければいいと思うんです。

 

例えば、肩こりの原因として霊が憑いている、とか。

 

別に、「あぁ、霊が憑いていたのか」と思った人が、除霊に行ったところで、特に何も問題にならないですし。

 

でも、「医師監修」の記事で、そんなことが書かれていたらどうでしょう。

 

「医者がそう言ってたんだから」と信じ込んで、全国の医療機関にそういう患者さんが溢れ返るかも知れません。

 

いい加減な記事を書くと、全国で頑張っている先生方に多大な迷惑がかかります。

 

それは、一人当たりの診察時間の延長につながり、結局は受診している全ての患者さんの待ち時間の増加になってくるのです。

 

実際、「ネットにはこう書いてあった」と不安になって受診する患者さんを沢山診てきました。

 

なので、「いい加減」な内容は「医師監修」の記事にはあってはならないと思っています。

 

極め付けは、「妊娠後期に胎動が弱まることは正常なことで問題はない」と言い切っていたこと。

 

さすがにこれは見過ごすことは出来ません。

 

問題ないことが多いけれども、赤ちゃんが苦しいサインであることにも気を配らなければならない「医師」が、「正常だから問題ない」と言い切っていいはずがありません。

 

それを指摘したのですが、「記事の目的は、読んでいる人に安心を与えることです」と返されてしまいました。

 

 

これが、「一般の人」と「医療従事者」の違いなんだと痛感しました。

 

我々医師は、最悪の事態を防ぐのが大事な仕事です。そのように頑張っていても、防ぎきれなかったツライ想いを皆んなしています。

 

だからこそ、「安心を与える」ためには、しっかり検査をして確信を得るのが大事だと考えています。

 

それでも、いくら検査しても100%がありえないのが「医療」なんです。

 

そんな「医療」を、たった数行の文章で「安心を与えられる」と思っているんだとすれば、それは「医師監修」の手から離れるべきだと思います。

 

 

なんてことを思いつつ、「監修」を続けていたら、運営サイト側から「もう結構です」との連絡が入りました。

 

根拠のないことを書いていたので、根拠を教えてください、と言っても、「読んでいる人がわかりやすい言葉で安心を与えるのが目的」という返事、、、

 

読む側に耳触りの良いことを書いてアクセス数を稼ぐのが目的で、それによって患者や医療側がどうなるかは、二の次なんでしょう。

 

確か、アクセス数を稼ぐためには、それなりの文字数が必要だったと思います。文字数を稼ぐため、記事を量産するために、根拠のないことでも、とりあえず「日本語」を「数多く」並べる姿勢のようでした。

 

直すべき部分を直さないなら、こちらとしても監修を続けることはできないので、そちらのサイトの監修は続けないことになりました。

 

 

マスコミもそうですが、「伝えること」を仕事にすると、「お金」が絡んできて、「本当に伝えないといけないこと」と「仕事として伝えること」にはギャップが生じるんだなと、改めて実感しました。

 

こちらのブログでは、出来るだけ「正しい」内容を書きたいと思っていますので、何か違うんじゃないか、と思われることがあれば、どんどん指摘していただければ幸いです。

 

 

ついに改装が終わりました

今まで改装していたので、仮の状態で診察していたのですが、先日改装が終わり、新たな内装の中で診察が始まりました。

 

先月は雑然とした診察室や内診室での診察となってしまい、ご迷惑をおかけいたしました。

 

本日から5階の新たな内装での診察となります。

 

キッズルームもありますし、個別のソファでゆっくりお待ちいただけると思いますので、何か気になることがあれば、お気軽にご来院ください。

 

また、電話番号も本日より変わりますので、ご確認をお願いします。

 

 

 

 

 

おりものの匂いが気になったら

外来によく来られる患者さんの訴えの中で、おりものの匂いというのは、かなり頻繁にある症状です。


おりものが増える原因としては、カンジダであったり、クラミジアであったり、淋菌であったりと、様々な原因が考えられるのですが、匂いの原因になるのは、その多くが、


細菌性腟症

というものです。


そこで、今回は細菌性腟症についてまとめたいと思います。



腟内には、もともと乳酸菌がいるのが正常な状態なのですが、この正常な乳酸菌が減ってしまい、そのほかの様々な菌が増えてしまうと、細菌性腟症という状態になります。

おりものの匂いを始め、下腹部痛や不正出血の原因になることもあります。


特に「匂い」自体は特徴的なため、一度感染したことがある方であれば、「またなりました」と受診されることも多いです。



治療としては、腟の中に入れる「腟錠」という薬を使うことが多いです。

薬は「クロマイ」と「フラジール」を使うことがほとんど。


何度か繰り返している人であれば「クロマイを下さい」と薬を指名されることも多いです。


ただ、ここで一点だけ注意があります。


冒頭で、腟の中には乳酸菌がいるのが正常と説明したのですが、「クロマイ」という薬は、この正常な乳酸菌すら殺してしまう可能性があるのです。


Ocana V, Silva C, Nader-Macias ME: Antibiotic Susceptibility of Potentially Probiotic Vaginal Lactobacilli. Infect Dis Obstet Gynecol 2006; 1-6


こちらの論文によると、クロマイは10μg/mlという濃度で、乳酸菌の発育をストップしてしまいます。

一方で、フラジールであれば、1000μg/mlという濃度になって初めて乳酸菌の発育をストップするのです。


以上のことから、おりものの匂いが気になるときには、フラジールをお勧めしています。



このフラジール自体、細菌性腟症に保険で使えるようになったのが数年前なので、クロマイをずっと使っている病院もあるとは思いますが、乳酸菌のことを思えば、フラジールの方がいいですよね。


時々、フラジールは効かなくて、クロマイの方が効く、という方もいるので、「クロマイがダメ!!」っていう訳ではないですよ。



ちなみに、フラジールには腟錠だけではなくて、内服薬もあります。

腟錠が苦手、という方もいらっしゃるので、そんな時は内服薬を試してみてくださいね。

子宮がん検診で精密検査を受けた方へ

子宮頸がん検診で引っかかってしまい、精密検査を受けた方は、結果次第で半年後や3か月後のフォローになっているかと思います。

そこで、今回は「精密検査の結果」について説明したいと思います。


まず、精密検査の結果でよく出てくるのが


CIN1
CIN2
CIN3

という表記です。



正常と癌の間に

CIN

という状態が存在することになり、1が一番正常に近く、数字が大きくなるにつれて癌に近づく形になります。




CIN1は、日本語では


軽度異形成

と言います。


CIN1がCIN3に進んでしまう確率は1~2割ほどと言われており、特に30歳未満の女性では9割近くが自然に正常に戻る、と言われています。

そのため、CIN1の場合には、半年ごとにがん検診を受けましょう、という方針になります。

ただ、先ほども説明したように、CIN1は正常に戻る可能性が高いため、あまり長い期間、CIN1が続くようだと、改めて精密検査が必要になることもあります。



次に、CIN2についてです。

これは、日本語では

中等度異形成
と言います。


CIN2でも、30歳未満の女性や妊婦さんでは、自然に治ることも多いので、特に治療せずに経過を診ることになります。ただ、CIN1に比べれば、少し厳密に経過を診たいので、3~6カ月間隔で検査をすることになります。

ただし、こまめに受診するのが難しい方、強い希望がある方、1~2年経過を診ても治らないような方であれば、治療の適応になってきます。

また、HPVといって、子宮頸がんの原因になるウイルスのうち、リスクの高いウイルス=子宮頸がんの原因となる確率が高いものに感染している場合も、治療することがあります。


治療としては、子宮腟部といって、CIN2の組織がある部分を切り取る手術や、レーザー蒸散という「CIN2の部分をレーザーで焼く」治療法もあります。


特に、子宮腟部の組織を切り取る手術では、妊娠した時に流産や早産のリスクが高くなることがあるので、これから妊娠を考えている方には、レーザーで焼く「レーザー蒸散」が選択肢になってきます。


レーザー蒸散の手術を出来る病院は限られています。レーザー自体がとても高価な機械なので、都内でしたら


慶応義塾大学病院や


kompas.hosp.keio.ac.jp



JR東京総合病院が有名です。

婦人科検診で再検査が必要といわれたら…|JR東京総合病院


CIN1もCIN2も自然に治ることが多いとは言いましたが、一番怖いのは「大丈夫だと思った」と放置してしまうことです。

1年、2年と何も検査をせずに放置してしまって、気が付いた時には・・・というのは絶対避けたいことなので、しっかり忘れずに検査を受けるようにしてくださいね。

悩みの乗り切り方

私はO型なので、基本的に細かいことは気にしません。

血液型だけで性格が決まるわけがない!!というごもっともなご意見は置いといて・・・


何か聞かれても、よほどこだわることがなければ



「お好きにどうぞ」


とホイホイYesを言ってしまう性格です。


よく言えば、おおらか。悪く言えば、いい加減だと思っています。



ただ、最近は散らかっているのが気になるようになり、たまにA型と間違えられたりします。


やっぱり、血液型はあてにならないですね。



そんな「おおらかな」私ですが、さまざまな人と関わるにつれて、やはり


人間関係

の悩みは出てきます。


そのせいで睡眠時間が短くなるくらい悩んだこともありました。



そんな時に、悩みを少し解決してくれたのは


物事は無色透明

という考え方でした。


どんな出来事も、それが起こったという事実は事実として存在するけれど、それをどのように解釈するかは、自分の心の持ち方次第だ、ということ。


例えば、台風が来た時に、


「嫌いな授業が休めるからラッキー」


と捉えるのか、


「せっかく楽しみにしていた遠足だったのに」


と捉えるかは、人それぞれなんだということ。



当たり前と言えば当たり前なんですけど、その物事を良くとらえるか悪くとらえるかは、自分の気の持ちようなんだ、ということです。




そう考えられるようになって、いくらか悩みの重さは軽くなったように感じます。


まだまだ「物事」を自分が思う色に染めて見がちですが、少しずつ自分を変えられたらな、と思います。



皆さんも、いろいろ悩まれたときは



無色透明


という言葉を思い出してみてくださいね。