子宮内膜症で手術が大変だった時のお話
子宮内膜症というのをお聞きになったことのある方は多いと思います。
生理が重い原因として、子宮内膜症というのは非常に厄介な病気です。
私が勤務していた総合病院では、近くの開業医さんから手術が必要な患者さんを沢山紹介してもらうのですが、その中でも子宮内膜症の患者さんの手術は本当に大変です。
まず、子宮内膜症というのは、子宮の内側にある「内膜」という組織が、内膜とは別の場所に飛び散ってしまう状態のことを言います。
その飛び散った「内膜」の組織が、生理のたびに出血したり、痛み物質を出したりするため、生理がとても重くなってしまうのです。
「内膜」組織が卵巣で育ってしまうと、卵巣が腫れてしまい、
内膜症性嚢胞(のうほう)
と言ったり
チョコレート嚢腫(のうしゅ)
と言ったりします。
一昔前では、宇多田ヒカルさんや松浦亜弥さんが、この病名を告白されていたかと思います。
そして、「内膜」組織が、子宮の壁の中で育ってしまい、子宮の壁が分厚くなってしまう状況を
子宮腺筋症
といいます。
これらは完全に独立した病気ではなく、どちらも存在することも多いのです。
そして、こういった子宮内膜症があると、お腹の中で
癒着
というものを起こします。
これは、もともとくっ付いてなかった子宮、卵巣、腸がペタペタとくっ付いてしまい、さらなる生理痛の強さに繋がるのです。
これが進むと、排便の時に痛くなったり、性行為の時に痛くなったりもします。
ここまで進んでしまうと、本当に手術が大変になります。
癒着というのは時間が経てば経つほど硬くなってしまい、簡単には剥がせないのです。
両手でグッと引っ張っても、癒着部分が剥がれるのではなく、正常な組織の方が裂けるくらい、硬くなってしまいます。
そのため、くっ付いている腸を剥がす時には細心の注意を払いながら、剥がしていくのですが、、、
どうしても「硬い」癒着より、「柔らかい」腸の方が避けてしまうことがあるのです。
避けてしまう腸の場所にもよるのですが、場所が悪いと「人工肛門」と言って、一時的にお腹の上に腸を出して肛門を作り、そこに付けた袋に便が出てくるようにして、退院後は自分で袋を交換して便の処理をしないといけなくなります。
もちろん、一生そうなるわけではなく、ある程度落ち着いた時点で、お腹の外に出していた腸を戻すのですが、その時にも入院が必要になるので、なかなか大変な経過を辿ります。
そういった手術を経験していると、本当に生理痛は放置しないで欲しい、と思うのです。
時折、生理痛がヒドイのに、超音波で何もないから大丈夫!と言われて困っている患者さんが来られます。
子宮内膜症は超音波では見えないこともある!
これだけは覚えておいて下さい。
上の方で説明した、卵巣の腫れや子宮腺筋症は超音波で見るとわかるのですが、そういった大きな腫れを作らないタイプの子宮内膜症もあり、それは超音波ではわからないのです。
もし、生理痛がひどいのに、超音波で正常と言われて、薬を何も出してもらえなかった方は、一度相談にいらして下さいね。