平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

ついに改装が終わりました

今まで改装していたので、仮の状態で診察していたのですが、先日改装が終わり、新たな内装の中で診察が始まりました。

 

先月は雑然とした診察室や内診室での診察となってしまい、ご迷惑をおかけいたしました。

 

本日から5階の新たな内装での診察となります。

 

キッズルームもありますし、個別のソファでゆっくりお待ちいただけると思いますので、何か気になることがあれば、お気軽にご来院ください。

 

また、電話番号も本日より変わりますので、ご確認をお願いします。

 

 

 

 

 

おりものの匂いが気になったら

外来によく来られる患者さんの訴えの中で、おりものの匂いというのは、かなり頻繁にある症状です。


おりものが増える原因としては、カンジダであったり、クラミジアであったり、淋菌であったりと、様々な原因が考えられるのですが、匂いの原因になるのは、その多くが、


細菌性腟症

というものです。


そこで、今回は細菌性腟症についてまとめたいと思います。



腟内には、もともと乳酸菌がいるのが正常な状態なのですが、この正常な乳酸菌が減ってしまい、そのほかの様々な菌が増えてしまうと、細菌性腟症という状態になります。

おりものの匂いを始め、下腹部痛や不正出血の原因になることもあります。


特に「匂い」自体は特徴的なため、一度感染したことがある方であれば、「またなりました」と受診されることも多いです。



治療としては、腟の中に入れる「腟錠」という薬を使うことが多いです。

薬は「クロマイ」と「フラジール」を使うことがほとんど。


何度か繰り返している人であれば「クロマイを下さい」と薬を指名されることも多いです。


ただ、ここで一点だけ注意があります。


冒頭で、腟の中には乳酸菌がいるのが正常と説明したのですが、「クロマイ」という薬は、この正常な乳酸菌すら殺してしまう可能性があるのです。


Ocana V, Silva C, Nader-Macias ME: Antibiotic Susceptibility of Potentially Probiotic Vaginal Lactobacilli. Infect Dis Obstet Gynecol 2006; 1-6


こちらの論文によると、クロマイは10μg/mlという濃度で、乳酸菌の発育をストップしてしまいます。

一方で、フラジールであれば、1000μg/mlという濃度になって初めて乳酸菌の発育をストップするのです。


以上のことから、おりものの匂いが気になるときには、フラジールをお勧めしています。



このフラジール自体、細菌性腟症に保険で使えるようになったのが数年前なので、クロマイをずっと使っている病院もあるとは思いますが、乳酸菌のことを思えば、フラジールの方がいいですよね。


時々、フラジールは効かなくて、クロマイの方が効く、という方もいるので、「クロマイがダメ!!」っていう訳ではないですよ。



ちなみに、フラジールには腟錠だけではなくて、内服薬もあります。

腟錠が苦手、という方もいらっしゃるので、そんな時は内服薬を試してみてくださいね。

子宮がん検診で精密検査を受けた方へ

子宮頸がん検診で引っかかってしまい、精密検査を受けた方は、結果次第で半年後や3か月後のフォローになっているかと思います。

そこで、今回は「精密検査の結果」について説明したいと思います。


まず、精密検査の結果でよく出てくるのが


CIN1
CIN2
CIN3

という表記です。



正常と癌の間に

CIN

という状態が存在することになり、1が一番正常に近く、数字が大きくなるにつれて癌に近づく形になります。




CIN1は、日本語では


軽度異形成

と言います。


CIN1がCIN3に進んでしまう確率は1~2割ほどと言われており、特に30歳未満の女性では9割近くが自然に正常に戻る、と言われています。

そのため、CIN1の場合には、半年ごとにがん検診を受けましょう、という方針になります。

ただ、先ほども説明したように、CIN1は正常に戻る可能性が高いため、あまり長い期間、CIN1が続くようだと、改めて精密検査が必要になることもあります。



次に、CIN2についてです。

これは、日本語では

中等度異形成
と言います。


CIN2でも、30歳未満の女性や妊婦さんでは、自然に治ることも多いので、特に治療せずに経過を診ることになります。ただ、CIN1に比べれば、少し厳密に経過を診たいので、3~6カ月間隔で検査をすることになります。

ただし、こまめに受診するのが難しい方、強い希望がある方、1~2年経過を診ても治らないような方であれば、治療の適応になってきます。

また、HPVといって、子宮頸がんの原因になるウイルスのうち、リスクの高いウイルス=子宮頸がんの原因となる確率が高いものに感染している場合も、治療することがあります。


治療としては、子宮腟部といって、CIN2の組織がある部分を切り取る手術や、レーザー蒸散という「CIN2の部分をレーザーで焼く」治療法もあります。


特に、子宮腟部の組織を切り取る手術では、妊娠した時に流産や早産のリスクが高くなることがあるので、これから妊娠を考えている方には、レーザーで焼く「レーザー蒸散」が選択肢になってきます。


レーザー蒸散の手術を出来る病院は限られています。レーザー自体がとても高価な機械なので、都内でしたら


慶応義塾大学病院や


kompas.hosp.keio.ac.jp



JR東京総合病院が有名です。

婦人科検診で再検査が必要といわれたら…|JR東京総合病院


CIN1もCIN2も自然に治ることが多いとは言いましたが、一番怖いのは「大丈夫だと思った」と放置してしまうことです。

1年、2年と何も検査をせずに放置してしまって、気が付いた時には・・・というのは絶対避けたいことなので、しっかり忘れずに検査を受けるようにしてくださいね。

悩みの乗り切り方

私はO型なので、基本的に細かいことは気にしません。

血液型だけで性格が決まるわけがない!!というごもっともなご意見は置いといて・・・


何か聞かれても、よほどこだわることがなければ



「お好きにどうぞ」


とホイホイYesを言ってしまう性格です。


よく言えば、おおらか。悪く言えば、いい加減だと思っています。



ただ、最近は散らかっているのが気になるようになり、たまにA型と間違えられたりします。


やっぱり、血液型はあてにならないですね。



そんな「おおらかな」私ですが、さまざまな人と関わるにつれて、やはり


人間関係

の悩みは出てきます。


そのせいで睡眠時間が短くなるくらい悩んだこともありました。



そんな時に、悩みを少し解決してくれたのは


物事は無色透明

という考え方でした。


どんな出来事も、それが起こったという事実は事実として存在するけれど、それをどのように解釈するかは、自分の心の持ち方次第だ、ということ。


例えば、台風が来た時に、


「嫌いな授業が休めるからラッキー」


と捉えるのか、


「せっかく楽しみにしていた遠足だったのに」


と捉えるかは、人それぞれなんだということ。



当たり前と言えば当たり前なんですけど、その物事を良くとらえるか悪くとらえるかは、自分の気の持ちようなんだ、ということです。




そう考えられるようになって、いくらか悩みの重さは軽くなったように感じます。


まだまだ「物事」を自分が思う色に染めて見がちですが、少しずつ自分を変えられたらな、と思います。



皆さんも、いろいろ悩まれたときは



無色透明


という言葉を思い出してみてくださいね。

子宮内膜症で手術が大変だった話

以前、子宮内膜症で癒着が大変だったために、人工肛門を作ることになったブログを書きました。

 

 

今回は、腸ではなく尿管に癒着があって大変だった話をしたいと思います。

 

 

その患者さんは、もともと生理痛が酷かったのですが、腰の痛みが急に強くなった、ということで受診されました。

 

診察してみると、子宮や卵巣は全く腫れていません。腰の痛みも背中の真ん中あたりで、どうも婦人科とは関係なさそうな雰囲気です。

 

そこで、内科の先生に相談したところ、CTの結果で腎臓が腫れていることがわかりました。

 

そこから泌尿器科の先生に紹介となり、詳しく調べてもらったところ、どうやら腎臓から膀胱に向かう「尿管」という管の流れが悪いようなのです。

 

なぜ尿管の流れが悪いのか、泌尿器科の先生達と話し合った結果、生理痛の酷さもあるので、内膜症による尿管の癒着ではないか、という結論になりました。

 

ただ、尿管の手術となると、婦人科医だけでは手が足りないので、まずは婦人科で手術をして、必要に応じて泌尿器科の先生にも手術に入ってもらう方針となりました。

 

 

実際にお腹を開けてみると、子宮や卵巣周囲の癒着はそれほど大したことはありません。

 

しかし、尿管の周りに向かうにつれて、周りの組織がとても硬くなり、明らかに「癒着」が強くなり始めました。

 

「尿管」と書くと、明らかな「管」なので、すぐに見つけられるだろうと思われるかも知れませんが、周りの組織と癒着してしまって、見分けがほとんど付きません。

 

いつもは触った感触で見分けるのですが、やはり「癒着」により周りの組織ごとカチカチになっているため、触っただけでは、どこに尿管があるかもわかりません。

 

そこで少しずつ、本当に少しずつ癒着している組織を落としていき、尿管を掘り始めました。

 

1時間以上、癒着を剥がすのに時間がかかりました。ほんの数センチの癒着を剥がすのに、これだけ時間がかかったので、かなり大変な手術でした。

 

やっと尿管を解放できた、と思い、念のため反対側の尿管も確認しようとしたところ、術前の検査では何の問題もなかったのに、こちらもまた癒着が激しいのです、、、

 

しかし、こちらの尿管に関しては流れは悪くなっていません。

 

流れが悪くないのに尿管を解放する必要はないだろう、ということで、こちらの尿管はそのままにして、お腹を閉じました。

 

術後は内膜症予防のためのホルモン剤を飲んでもらい、予防につとめたのですが、、、

 

数ヶ月後、再び患者さんが腰痛を訴えて来院。検査してみると、解放したはずの尿管がまた詰まっていました、、、、

 

 

そこで再手術となったのですが、剥がした尿管の周りが再び癒着していたのです。それほど長い期間かけて出来上がった「癒着」ではなかったので、前回よりはスムーズに癒着を剥がすことができ、順調に手術は終わりました。

 

 

その後は、特に腰痛が出現することなく、順調に経過しましたが、内膜症の手術は本当に大変!というお話でした。

 

 

生理痛の重い方がみんなそうなる訳ではありませんが、本当に大変になると手術がとても難しくなって、患者さん自身の負担がとても大きくなってしまう、ということはわかって頂きたいと思います。

 

生理痛が重くて困っている方、ぜひ一度婦人科で相談してみて下さいね。