不妊症かな、と思ったら
一般的に
避妊せずに1年経っても妊娠しないこと
が不妊症の定義とされています。
とは言え、「1年も待っていられない」「一刻も早く妊娠したい」という方もおられると思います。
そこで、「不妊症か否か」という定義は置いておいて、ある程度簡単に「妊娠できるのかな」という気持ちに答えられる検査を説明したいと思います。
まず一番簡単に調べられるのが
基礎体温
です。
病院を受診しなくても、「基礎体温計」を購入して、体温表をつけるだけで、しっかり排卵できているのかどうかを調べることができます。
最近では、体温を測るだけで勝手にアプリに体温表を付けてくれる優れものもあるので、今までつけたことがない方は、一度試してみてはどうでしょうか。
ただ、毎日計測するのが結構大変だったりします。そこは、ある程度アバウトでも大丈夫です。1日計測し忘れたところで、大した問題ではありません。
最終的に体温のグラフを遠目に見たときに、低温の部分と高温の部分が分かれているようであれば、まず問題なく排卵していると思って大丈夫でしょう。
いつまで経っても、同じような体温でグラフが推移していて、低温なのか高温なのか、はっきりしない場合は、うまく排卵できていない可能性があります。
そういった時は、ホルモン採血をしてみる必要があるのですが、生理3日目~7日目くらいに採血する必要があるので、うまくタイミングが合えば受診してみてください。
もし、何カ月も生理が来ない、という方であれば、そこまで生理中のタイミングにこだわる必要はないので、都合のいいタイミングで受診してくださいね。
あとは、クラミジアの検査も早めに受けてほしいと思います。
クラミジアは、本当に知らない間に感染していることが多いです。そして、放置していると不妊症の原因にもなってしまい、クラミジア自体がお腹の中に広がって、「癒着」を起こしてしまうと、その「癒着」は飲み薬では治すことができません。
癒着とは、もともとくっついていない、子宮や卵巣、卵管、腸がベタベタくっついてしまうことです。それが原因で、不妊症になってしまったり、排便時の痛みが出たり、性交痛がでたりします。
この「癒着」は、クラミジアだけでなく、子宮内膜症が酷くなった場合でも起きてしまうもので、いずれも飲み薬だけだと治療が難しく、超音波での診断も難しいため、非常に厄介な状況と言えます。
そのため、できるだけ早く原因を見つけて、ひどい「癒着」に進むのを防止することが大事になってきます。
あとは、精液検査です。
統計上、不妊症の原因の半分には、男性側の原因があるのです。そのため、精液検査はかなり早い段階で調べておいた方がいい検査です。
女性が婦人科を受診して、いろいろ検査を受けなければならないことを考えると、男性は精液検査を受ければいいだけなので、比較的ハードルが低い検査かと思います。
ぜひ、相手の方としっかり相談して、ひとつひとつ検査を進めてみてくださいね。
中絶手術を減らすために
日本全国で年間18万件もの中絶手術が行われています。
中絶手術というのは、患者さん本人の精神的・肉体的ダメージはもちろんのこと、実際に中絶手術をする産婦人科医や、それに関わる看護師、医療スタッフ、みんなが精神的に傷ついてしまう手術です。
産婦人科医は、できることなら中絶手術はしたくないのです。
そこで、今回は中絶手術後の避妊方法について説明したいと思います。
中絶手術を受けた後、早ければ10日ほどで再び排卵すると言われています。
中絶手術の術後の経過観察で1か月後に来てもらった時には、すでに妊娠していた、という方を診たこともあります。
そのため、中絶手術を受けた後には、もう2度と繰り返さないために、何らかの方法を選ぶ必要があります。
ミレーナという子宮の中に小さい棒を入れる避妊方法がある、ということは以前説明しました。
ただ、どうしても体の中に何かを入れることに不安がある方は多いので、そういった場合にはピルを飲んでもらうことになります。
中絶手術をした直後からピルを飲むことも選択肢の一つにはなります。
1点気になるのは、血栓症という副作用の事だけです。
血栓症というのは、血管の中に血の塊ができて、ごくごく稀に命に関わることがあるのですが、ピルを飲むことで、血栓症になる確率がほんの少し上がってしまうのです。
また、妊娠することでも血栓症のリスクは上がりますし、「手術」そのものも血栓症のリスクにはなります。
つまり、中絶手術直後からピルを内服することは、「妊娠」「手術」「ピル」という血栓症のリスクが重なっていることになるのです。
そこで、中絶手術直後にピルを内服するかどうかは、その期間の妊娠する可能性と、血栓症のリスクを考えた上で、決めていくことになります。
手術に関しては、30分以上かかる手術だと、特に手術前4週間と術後2週間はピルを内服してはいけないとされています。また、妊娠に関しては、妊娠後期から産後にかけて、より血栓症のリスクが高くなります。
そう考えると、ほとんどの中絶手術は30分以上かからないですし、妊娠に関してもごく初期ですので、それほど血栓リスクは高くないだろうと言えます。
そのため、「妊娠する可能性」が高いのであれば、中絶手術直後からピルを飲むことは選択肢の一つになると言えます。
しっかり主治医の先生と相談してみてくださいね。
ミレーナという避妊方法
妊娠したものの、様々な理由で中絶を選ぶ方がいるのですが、精神的にも肉体的にも同じことは繰り返したくないですよね。
コンドームはどうしても男性主体の避妊であり、女性主体で避妊するためには、ピルやミレーナを使ってもらうことになります。
生理痛に対する治療法としてミレーナがある、ということは以前説明したのですが、避妊にも十分効果を発揮します。
パール指数といって、1年間に避妊に失敗する確率を現した数字があるのですが、
ミレーナだと、パール指数は0.2
ピルだと、しっかり内服出来て0.3ですが、飲み忘れることもあるので、一般的には、9.0ほどになると言われています。
ミレーナであれば、一度子宮の中に入れてしまえば、あとはもう何もすることがないので、ピルのように飲み忘れを心配する必要もありません。
また、ピルだと血栓症という副作用がありますが、ミレーナではそれがありません。
ただ、ミレーナを避妊目的で使うためには、保険が使えず、自費で使ってもらうことになります。
当院でミレーナを自費で入れる場合には6万円かかります。5年間は入れっぱなしで大丈夫なので、ちょうど月々1000円の負担という形です。
もちろん、妊娠の希望が出てきた時点でミレーナを抜いてしまえば大丈夫なので、将来的な妊娠に対する影響は考えなくても大丈夫です。
ミレーナを挿入するタイミングとしては、生理の終わり際になりますので、最初からミレーナを挿入するつもりであれば、生理終わり際に受診してくださいね。
一度話を聞いてみたい、という方であれば、どのタイミングで受診してもらっても大丈夫です。
ピルを飲むと妊娠しにくくなる?
生理と整えたい、避妊をしたい、などの理由でピルを希望される患者さんは多いのですが、よく質問されるのは
ピルを飲んで、将来の妊娠は大丈夫なのか
ということです。
結論から言うと、長期間ピルを服用しても、将来の妊娠には
影響しません。
実際に、ピルを内服している6万人を対象にした論文があるのですが、妊娠希望があってピルを中止した人のうち、1年後に8割、2年後に9割の人が妊娠した、という結果になりました。
ピルを服用していた期間で比較してみても、2年未満の服用者では、1年後の妊娠率が81%だったのに対し、2年以上服用していた人では、1年後の妊娠率が79%という結果でした。
このことから、ピルを服用している期間によって、妊娠率に差は出ない、と言われています。
これは様々なピルの種類によっても、同じような結果になっています。
また、ピルではなくディナゲストという薬でも同様に、中止1年後の妊娠率が9割と言われています。
以上のことから、生理痛に悩んでいる方、生理を整えたい方、しっかりと避妊したい方は、将来的な妊娠に関する心配はせずにピルやディナゲストを使ってもらえれば、と思います。
生理の前の調子の悪さ、どうしてますか?
女性の半数以上が、生理前に調子が悪くなる、と言われています。
お聞きになったことがある方もいると思いますが、病名で言えば、
と言います。
このPMS、軽いものでは特に医学的な治療が必要ないのですが、やはり症状が重くなると何らかの薬が必要になり、症状が重くなってくると、PMSではなく、
月経前不快気分障害
という病名に変わってくるのです。
PMS、PMDDでは、生理前に調子が悪くなり、生理が来ると症状が軽くなるのが特徴ですが、治療法としては漢方であったり、ピルを使うことが多いのです。
ただ、ピルに関しては保険で使えるお薬がありません。
ヤーズという薬が、PMDDに効くと言われており、アメリカでは保険適応になっているのですが、日本ではヤーズは生理痛に対してしか保険が効かないのです。
そのため、ヤーズをPMS、PMDDに使おうとすると、自費で月7000円近くしてしまいます。
実際には、ヤーズ以外のピルを飲んでみてもらうと、PMSやPMDDに効くことも多いので、そちらで経過を診ることが多いです。
当院では、ヤーズ以外のピルが月3000円ですので、月7000円近くするヤーズに比べれば、だいぶ安いですよね。
もちろん、PMSやPMDDに加えて、生理痛で悩んでいる方は、ヤーズを保険で使えますので、月々2000円ちょっとの負担になります。
その他の治療法として漢方薬もありますので、生理前の調子の悪さで悩んでいる方は、一度ご相談ください。