平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

妊娠中に気をつけること 手洗いをしっかりと!

先日、ローストビーフや火がしっかり通っていないお肉を食べると、

 

トキソプラズマ

 

という微生物に感染して赤ちゃんに影響が出る、という話をしました。

 

それと同じように妊娠中に気をつけたいものがあります。

 

それが

 

サイトメガロ

 

というもの。

 

これは、小さい子供のオシッコや唾液にたくさん含まれていて、それらを触れた手で何かを食べると、口から感染してしまうのです。

 

そのため、そういったものに触れた後にはしっかりと手洗いが必要ですし、子供の食べ残しを食べたり、大皿料理を一緒に食べる時も感染する可能性は出てきます。

 

自分が口にする食器で子供に食べさせてあげるのも注意が必要ですね。

 

もちろん、感染したら絶対赤ちゃんに影響が出るわけでもないですし、周りの友達でそんなこと気にしている人いないかも知れません。

 

それでも、たった10ヶ月の間、気をつけてあげるだけで、赤ちゃんの一生が変わる可能性があるのだとすれば、知識としては知っておいて欲しいのです。

 

また、手洗いに関しては、このサイトメガロ以外でも、いろんな感染症予防に重要ですし、今まで不十分だった方は、妊娠を機に見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

妊娠中に食べてはいけないローストビーフ

初めて妊娠した方は不安がいっぱいで、赤ちゃんが子宮の中に確認できた時点で「何か心配なことはありますか」と尋ねても、「何を聞けばいいのかわからない」と言われることが多いです。

 

そんな中でもよく聞かれるのは「妊娠中にやってはいけないこと」

 

お酒やタバコは当然ダメなので、みなさんうなづいてくれるのですが、生肉や生ハムなど加熱不十分なお肉はダメだというと、驚かれることも多いです。

 

特に、近頃よく見るローストビーフ。あれも怪しいですよね。

 

いわゆる加熱不十分なお肉で心配なことは

 

トキソプラズマ

 

という微生物に感染してしまうこと。

 

妊娠中に感染してしまうと、赤ちゃんに影響が出ることがあるので、疑わしい食べ物は避けた方がいいですよね。

 

このトキソプラズマ、肉の中心が67度になるまで加熱すれば大丈夫と言われています。

 

けれど、世の中の全てのローストビーフが本当にそこまで加熱されているでしょうか。

 

そう考えると、あえて妊娠中にローストビーフを選んで食べなくてもいいですよね。

 

というわけで、妊娠中はしっかりと火が通っているお肉を食べましょう。

 

麻疹ワクチンは必要なのか

様々なワクチンがある中で、ワクチンを接種した後に何らかの副作用が出た場合、「それがワクチンのせいだ」と問題になることは度々あります。

そこで、今回は

麻疹


について調べた事をまとめてみました。


クリニックのHPになります。


麻疹について | 平和島レディースクリニック



こちらのHPに詳しくまとめているのですが、ワクチンを接種することで様々な病気の確率を下げることができます。


感染 ワクチン
ショック (全ての薬に可能性あり) 0.1%未満 ※3
血小板減少性紫斑病  6000人に1人 ※4 100万人に1人 ※3
急性散在性脳脊髄炎  10万人に0.8人以下 ※5  なし ※6
脳炎 1000人に1人 ※2 100万人に1人以下 ※3
亜急性硬化性全脳炎※1 数千~数万人に1人 ※1,3 なし ※1
肺炎 6% ※2 なし
麻疹症状 1週間、発熱・発疹 ※2 8%に発熱、6%に発疹 ※2


※1:亜急性硬化性全脳炎ガイドラインより  http://prion.umin.jp/guideline/guideline_sspe.html

感染して数年して発症し、運動障害・知能障害が進行して、治療法が無く死に至る可能性が高い。

※2:国立感染症研究所HPより https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html

脳炎:麻疹による2大死因の一つ。 発疹出現後数日して発症し、60%は完全に治るが、25%は後遺症が残り、15%は死に至る。

肺炎:麻疹による2大死因の一つ。 乳児死亡の60%は肺炎が原因。

※3:麻疹ワクチン 添付文書より

※4:日下奈津子 他 :ワクチン接種後に発症した特発性血小板減少性紫斑病の2例. 仙台市立病院医誌 29,55-60,2009

https://hospital.city.sendai.jp/pdf/p055-060%2029.pdf

※5:「10万人に0,8人」というのは麻疹に限らず、日本国内で発症する急性散在性脳脊髄炎全てについて。

山口結 他: 我が国における小児急性散在性脳脊髄炎、多発性硬化症の現状. 脳と発達 42,227-229,2010

※6:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性散在性脳脊髄炎」より






特に妊婦さんでは、日本国内で、2000年~2001年に妊娠中に麻疹感染した妊婦さん8人のうち、3人が流産・死産という結果になっています。

(Chiba ME, et al. Measles infection in pregnancy.  J Infect. 2003 Jul;47(1):40-4.)



いかかでしょうか。



ワクチンを打つことで副作用が出るかもしれません。でも、それは自然に感染した時の確率よりずっと低いことなのです。


麻疹に対する抵抗力があるかどうかは採血で簡単に調べられます。



麻疹は感染力が非常に強い病気です。麻疹に対して抵抗力があるのかどうか、一度調べてみてくださいね。

「病は気から」っていうのは事実

みなさんは、

 

プラセボ

 

という名前をお聞きになったことはあるでしょうか。

 

日本語で

 

偽薬

 

と訳したりします。

 

 

偽の薬、つまり「薬として作用する成分が何も入っていない、単なる粒」ということです。

 

なぜ、そういうものが存在するかと言うと、ある薬の作用や副作用を調べる時に使うのです。

 

まずは、薬を飲んでもらう人100人に集まってもらいます。

 

それだけだと、薬が効いてるのか効いてないのかわからないので、同じように100人集まってもらって、そちらのグループには、薬ではなく、プラセボを飲んでもらうのです。

 

そして、大事な点は、飲んでいる人はもちろん、処方している医師ですら、その人が薬を飲んでいるか、プラセボを飲んでいるかわからないのです。

 

薬かプラセボかを把握しているのは統計を取る立場の人だけ。

 

そうして、何週間か何ヶ月間か継続してもらってデータを集めます。

 

 

その結果、プラセボより薬の方が改善している人が多ければ、その薬は効果がある、と判断されます。

 

そういったデータを製薬会社から見せてもらって、我々は勉強していているのですが、よくあるのは薬を飲んでいるグループは7〜8割の人が改善しました、というデータ。

 

おぉ、結構改善している。副作用も少ないみたいだし、結構いいんじゃないかな。

 

 

と、ここで目を写します。プラセボを飲んでいるグループの結果に。

 

5割の人が改善している!?

 

いやいや、何の効果もない単なる粒を飲んでるだけなのに、半分もの人が良くなっている!?

 

 

病は気から

 

 

これを目の当たりにするのです。

 

確かに薬を飲んだ方が治りがいいのはわかります。でも、薬じゃなくても、結構な割合で症状が良くなっているなら、何も薬だけに頼らなくていいんじゃないか、という思いが出てきます。

 

 

 

急を要する病気でなければ、薬を飲む時、プラセボか薬かランダムで処方されるシステムがあってもいい気がします。

 

そして、薬かプラセボがわからないシステムを選んだ場合に限り、薬代が3割安くなる、とか。

 

 

高齢化が進む中で、増大する医療費に対する一つの手になるのではないでしょうか。

 

 

 

 

医師を目指したきっかけ

医師として働いていて、よく聞かれるのは「ご両親はお医者さんですか?」という質問です。

 

世間的には医者の子供が医者になる、という印象が強いようですが、私の両親は医師ではありません。母は専業主婦で、父は普通のサラリーマンでした。

 

父方の家系には医療関係者はほとんどおらず、母方の家系に何人か医師がいるのですが、私自身が医学部に入るまで、そのような情報は知りませんでした。

 

しかも、父は大の医者嫌い。というより、民間療法が大好きで、西洋医学に真っ向から反対していました。

母も「医者になったら、死ぬまで勉強し続けないといけないから大変だよ」と、あまり医者になることを勧めない環境で育ちました。

 

そんな中で私が医師を目指そうと思ったのは、13歳の頃。未だに鮮明に覚えている「難民キャンプ」の取材をしたニュースを見た時でした。

 

何度か「難民キャンプ」という言葉は聞いたことがあり、「キャンプ」というくらいだから、数日や数週間単位でのお話だと思っていました。

 

ただ、その「難民キャンプ」は取材した1年前の映像と、その1年後の映像が全く変わらなかったのです。

 

しかも、1年前にそのテント内で妊娠していた女性が出産して、赤ちゃんを育てていました。

 

その報道を見て、「キャンプ」というより「住居」になっていることに、子供心に衝撃を受けました。

 

画面の中に医師は出てきませんでしたが、当時の自分は「難民キャンプ」のように大変な思いをしている人のために働きたい、と強く思いました。

 

最も役に立つ資格は何か考えた時に、「医師免許」があれば、目の前の人を助けることができるんじゃないか、と医師を目指すことにしました。

 

そういった世界で活躍する医師が「国境なき医師団」という組織を作っていることも知り、医師になるまでは「国境なき医師団」に入るつもりでいました。

 

医師になってからは違う道を選び、今は産婦人科医として日本国内で働いていますが、もし違う人生を選べるのだとすれば、「国境なき医師団」で働きたい、という想いもあります。

 

開業したばかりですが、何年か経って落ち着いたら、そちらの仕事にも関わってみたいと思っています。何かを始めるのに遅すぎることはないですからね。

 

ということで、下のSK-Ⅱさんの「期限なんてない」というCMにうまくつながりました。