平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

妊娠と飲酒について

妊娠初期に受診された妊婦さん、特に初めての妊婦さんはわからないことだらけで、外来で「何か気になることがありますか」とたずねても、「わからないことがわからない状態」である事が多いです。

 

そんな時、決まって説明しているのは、お酒、タバコ、電子タバコ、生肉はダメですよ、という事。

 

どれも赤ちゃんにとって大きなリスクになる事ですので、気をつけてもらいたいことです。

 

そんな中で、今回は飲酒について説明したいと思います。

 

妊娠中の飲酒に関しては、海外での多くの研究により、飲酒が赤ちゃんの形態異常や脳萎縮、胎児発育不全、妊婦さんのうつ症状の悪化と関連することが示されています。

 

また、飲酒が量や時期に関係なく赤ちゃんに不可逆的な悪影響を及ぼす可能性も示されています。

 

しかし、妊娠初期、妊娠中後期の段階でお酒を「現在も飲んでいる」と回答している妊婦さんが、全体の9.5%、2.6%もいる、というデータがあります。

 

これは、東北大学が妊娠と飲酒に関して調査した論文です。

 

この論文では

 

・毎日、日本酒1合またはビール大瓶1本程度の飲酒を行った場合、飲酒をしていない妊婦さんに比較して妊娠高血圧症候群のリスクは3.45倍

 

・「以前は飲んでいたが止めた」と回答した妊婦さんでは妊娠高血圧症候群のリスクは0.90倍

 

という事が報告されています。

 

妊娠高血圧症候群とは、以前は妊娠中毒症とも呼んでいました。

 

妊娠中に血圧が高くなってしまい、赤ちゃんが小さく生まれたり、お母さんの脳出血のリスクが高くなったり、赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまい、母子ともに危険な状態になったり。

 

それは突然起きる事もあり、我々産婦人科医が最も恐れている病気の一つでもあります。

 

飲酒を続ける事で、そんな危険な状態になる確率が上がってしまう、というのはとても怖いですね。

 

妊娠が分かった段階で飲酒しないことが重要なのがよくわかってもらえたと思います。

 

タバコ・電子タバコもそうですが、妊娠が分かった時点で飲酒も控えるようにしましょうね。