医者にとっての職人気質
ある程度経験を積んでくると多くの人が悩むのが後進の指導ではないでしょうか。
例にもれず、私も研修医の教育という面で悩むことが多いです。
指示待ち世代、ゆとり世代という言葉で片づけてしまえば楽なのかもしれませんが、自分が正しいと信じて疑わない働き方と、あまりにかけ離れた働き方をされると、とても戸惑ってしまいます。
最近の若者は・・・
なんて年寄りじみた言葉が頭に浮かびそうになって、ダメだダメだとかき消す日々です。
たしかに医療、特に手術という分野では、見て覚えろ、というのが非常に多いです。
手取り足取り教えていたのでは、手術時間がめちゃくちゃ長くなってしまい、患者さんの負担が大きくなりすぎます。
接客業であれば、名札のところに「研修中」という文字をつけておけば、ある程度のミスは免責されるんでしょうけど、手術中に何かあれば、研修だろうが何だろうが関係ないのは当然のこと。
もちろん、それは医師に限った話ではなくて、飛行機に乗った時にパイロットの名札に「研修中」なんて書かれてた日には搭乗拒否したくなるのと同じなわけで。
我々も最善の手術をしながら、若手の指導もしていかないといけないのは、とても大変なわけです。
マニュアルのような手術書はあるものの、臨機応変に対応しないといけないことが連続するわけで、それはもう
見て覚える
しかないんですよね。
実際、自分自身も若いころはそうやって手術を覚えてきたわけで、それ以外の指導方法を知らない、というのもありますが。
もちろん、ベストな指導としては、手術している部分の映像を録画して、それを手術の後にゆっくり時間をかけて見直して指導する、というのがいいんでしょうけど、すいません、そんな時間ないんです・・・
そうでもしなければ後進が全く育たない、というのであれば、手術件数を制限してでも時間を作るべきなんでしょうけど、そこまでしなくても、よっっっぽど要領の悪い人でなければ、まぁ見て覚えてくれるわけです。
では、よっっっぽど要領の悪い研修医はどうするのか。
進路変更
をおススメしています。
正直、手術はセンスが如実に表れます。そして、それが手術時間、出血量、合併症にダイレクトにつながるのです。内科的なことであれば時間をかけて論文を調べれば治療法が見つかるかもしれませんが、手術中はもちろん待ったなし。自分のセンスと、それまでのトレーニング量が全てです。
ですので、あまりに要領が悪い研修医が、そのまま外科系の医師を続けるのは、患者さんはもとより、自分自身の為にもならないんですよね。術後の合併症って、術中に明らかなミスをしていなくても、どこかまずかった部分があったんじゃないかと、かなり自分を責めることになるので、要領の悪さのせいで合併症が増えれば、自分自身のメンタルがもちません。
もちろん、そういう研修医に対しては、
要領悪いから外科系むいてないよ
なんてダイレクトに言わないですよ。
論文調べるの早いし、患者さんへの説明の仕方も評判いいし、内科的な方が向いてるよ
ってソフトな言い方で・・・この場合、実際に評判がいいかどうかは不問ですが。