学会に行ってきました
先日、年に一度の産婦人科学会のために名古屋に行ってきました。
各病院の先生方が経験された貴重な症例の発表を知れる大切な学会です。
自分で経験できる症例には限りがあって、珍しいものは、何となく頭の中にあっても、実際に診察して見つけられるかというと、なかなか難しいこともあります。
それでも、こういった学会で他の先生の発表を聞き、「追体験」しておくことで、少しでも珍しい病気への注意力を高めておくことは大切なことだと考えています。
毎年、全国各地で開かれるのですが、北海道で開かれることもあり、勤務医時代は数日開かれる学会に参加する日と当直で病院に残る日を分けなければならず、参加したい講演にも参加できない不都合がありました。
全てオンラインでやってくれると、みんな自由に参加できるので、将来的にはそうなってほしいですね。
妊婦検査での赤ちゃんのエコーの講義や、AMHといういわゆる「卵巣年齢」の検査、NIPTという新型出生前検査についてなど、大変勉強になった学会でした。
特にNIPT:新型出生前検査に関しては、妊婦健診を受けられる妊婦さんから質問されることもあって、何とか自分のクリニックでも出来ないものかと思っていたものです。
ただ検査するだけで、その結果の意味や解釈については細かく説明しないクリニックがあり、検査を受けた妊婦さんも困ってしまうケースがあるとのことで、やはり遺伝カウンセリングもしっかりした上での検査が必要であると再認識できました。
NIPTによって全ての染色体異常が分かるわけではないということ、100%の精度ではないということ、見つかった染色体異常が出産までにどういった経過を辿り、出産後はどうなるのか、ということ、そして、その結果を家族がどう受け取って、どのような方針を選ぶのか、ということ。
そこまでしっかりサポートできた上で、NIPTの検査をやらなければならないということです。
産婦人科学会も今年の6月には検査をする施設の指針を出すようですので、それを受けて自分のクリニックでもどのように対応していくか、考えたいと思っています。
もし、NIPTの検査を受けようと思っている方は、簡単に検査だけ受けられる所ではなく、しっかりとカウンセリングもしてくれる病院で検査を受けるようにしましょう。
子宮筋腫の治療法
先日、子宮筋腫の治療薬で飲み薬が発売されたという記事を書きました。
それと同様に、毎月一回注射をしたり、毎日点鼻薬を使ったりして、閉経状態に持ち込み、筋腫を縮める方法もあります。
いずれも、閉経状態に持ち込むため、骨密度が低下するリスクがあり、基本的には半年でやめることになります。
そして、薬をやめて生理が再開すると、再び筋腫が元の大きさに戻ってしまいます。
ですので、そろそろ閉経が近いかな、と言う時に上記の治療法を選んで、何とか閉経までの症状を抑えておく、という使い方をすることが多いですね。
あとは、手術が決まっているけど、出来るだけ筋腫が小さい方が手術がしやすく、出血量も減らせるという時に、上の治療法を選ぶこともあります。
筋腫を手術で取り出す方法以外には、子宮を栄養する血管に栓をして筋腫を小さくする「子宮動脈塞栓術」や、超音波を集中して当てて筋腫組織を焼いてしまう「集束超音波治療」という方法があります。
いずれもできる病院がかなり限られているので、もし話を聞いてみたい、という方がいれば、対応可能な病院でご相談いただければ、と思います。
参考までに都内近郊で対応している病院として、いくつか挙げておきます。
子宮動脈塞栓
・川崎幸病院
https://saiwaihp.jp/departments/section/gynecology.php
・順天堂大学医学部付属順天堂医院
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/hoshasenka/activity/clinical/teishinsyu/teishinsyu3.html
・聖マリアンナ医科大学
https://www.marianna-u.ac.jp/Radiology/patient/17311/17312/017027.html
・東京慈恵医科大学付属病院
http://www.jikei.ac.jp/hospital/sukoyaka/index_15.html
・杏林大学医学部付属病院
https://www.kyorin-u.ac.jp/univ/user/medicine/obgy/labo/clinical
その他にも全国の対応病院の一覧があったので、こちらも参考にしてみてください。
http://www.jsir.or.jp/wp-content/uploads/2017/03/2_6-1.pdf
次に集束超音波治療に対応可能な病院です。
・板橋中央総合病院
https://www.ims-itabashi.jp/fus/
都内近郊だと、こちらの病院しか対応していないようです。
他には福島県になりますが、
・会津中央病院
https://www.onchikai.jp/fus/qa
以上が子宮筋腫の治療法になります。
筋腫の位置や個数、将来妊娠を考えているかどうかによって、様々な選択肢がありますので、筋腫の治療法に迷っている方は、婦人科でご相談ください。
妊娠中のアレルギー薬について
すっかり花粉が飛ぶ季節になりました。
花粉症で悩まれている妊婦さんから、妊娠中でも使える花粉症の薬について聞かれることも多いので、今回は妊娠中の花粉症の薬について説明したいと思います。
最も使いやすい薬は点鼻薬や点眼薬です。
「ステロイド」が含まれている薬だと少し抵抗があるかもしれませんが、点鼻薬や点眼薬に含まれるステロイドが体に吸収されるのは極めて微量であり、まず赤ちゃんに影響はないと言えます。
そのため、点鼻薬や点眼薬から使い始めるのがスムーズかと思います。
次に内服薬について。
アレルギーを抑える内服薬もいくつかあり、そのほとんどが妊娠中に内服しても問題ないものです。
その中でも、強いて順序をつけるとしたら、昔からある内服薬が、比較的安全なデータが揃っていると言えます。
https://www.amazon.co.jp/Pregnancy-Lactation-English-Gerald-Briggs-ebook/dp/B071D417PS/ref=mp_s_a_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&qid=1552337308&sr=8-1&pi=AC_SX236_SY340_QL65&keywords=drug+in+pregnancy
こちらの本には、妊娠・授乳中の薬に関して1600ページ近いデータが揃っていて、とても参考になるので、そこからデータを持ってきたいと思います。
アレルギー薬としてメジャーなものをあげると、
ポララミン
アレグラ
などがあります。
妊娠中に使う薬を考えるとき、妊婦や赤ちゃんに影響が出ないかという点で考えると、どの薬も影響が出たというデータはありません。
ですので、上にあげた薬は、どれも安心して使ってもらえるのですが、強いて優劣をつけるとすれば、動物実験のデータを参考にすることになります。
動物実験では、人間が使う量の何倍もの薬を投与して、影響が出るかどうかを調べています。
ポララミンやレスタミンは、かなり古い薬で、妊婦さんが使っても問題ない、というデータは多く揃っています。また、動物実験でも問題はありませんでした。
アレロックでも、ほとんど問題になるような影響はありませんでした。
クラリチン、ジルテック、アレグラは比較的新しい薬で、動物実験で大量に投与した場合に影響が出た、という論文はあります。
これらの薬に共通して言える事は、効果は人それぞれ。副作用としての眠気は、新しいものほど出にくい、ということです。
そのため、以前内服していてコレが効く、というのがわかっていれば、まずはそこから始めてみるのも一つの手。
または、日常生活で多少眠気が出ても大丈夫という方は、古い方の薬から試してみる、というのも一つの手になります。
花粉症があまりにも酷くなると、睡眠不足からストレスが強くなったり、疲れが溜まったりしますので、是非かかりつけ医でお薬の相談をなさって下さい。
(耳鼻科や内科の先生の中には、妊娠中は薬を何も出さない、と言い切る先生もいるので、受診前に妊娠中でも処方してもらえるのか確認することをお勧めします)
アフターピルが安くなりました
以前、避妊に失敗した場合の緊急避妊という方法について説明しました。
今回、この緊急避妊の時に飲んでもらうアフターピルという薬にジェネリックが発売されることになりました。
今まで、当院では診察料込で18,000円(税込)だったのですが、今回ジェネリックを採用することで、9,800円(税込)でお渡しすることになりました。
避妊に失敗してしまって、妊娠の心配があるという方は、緊急避妊という方法をご検討ください。
避妊に失敗してから72時間以内に飲むのが効果的、120時間以内でもある程度の効果は期待できます。
薬の効果は飲んだ時だけのもので、将来的な妊娠には一切影響は与えません。
副作用も軽い吐き気程度で済むことがほとんどですので、お気軽にご相談ください。
また、クリニックによっては、緊急避妊が必要になった理由を細かく聞いてくる所もあるようですが、それは落ち着いてから考えればいいことで、そこで受診のハードルを上げてしまうのは本末転倒だと思っています。
まずは、早めに薬を飲むこと。
それが一番大事です。
妊娠中に猫を飼ってもいいの?
トキソプラズマという名前を聞いた事はあるでしょうか?
これは、寄生虫の一種で、とても小さく肉眼では見ることができません。
また、健康な人が感染してもほとんど何も症状がでないため、普段は問題になることはありません。
ただし、妊娠中に感染すると、流産したり、赤ちゃんに影響が出ることがあるため、注意が必要です。
そんなトキソプラズマですが、身近なところでは、猫に感染することがあり、その猫がトキソプラズマをオーシストという形態で糞に排出し、新たな感染源になります。
では、猫を飼っている人が妊娠したら、猫を手放さないといけないのか?
決してそんなことはありません。
というのも、猫がオーシストを排出するのは、トキソプラズマに感染してから3週間程度の間だけだからです。
つまり、3週間以上前からずっと家の中だけで飼い続けて、外の世界と接触したり、生肉を食べたりしていない猫であれば、トキソプラズマを排出する可能性はない、ということです。
(生肉にもトキソプラズマは含まれているため、妊婦さん自身も生焼けの肉やローストビーフなど、赤い部分があるお肉は食べてはいけませんよ)
妊娠前からずっと家の中だけで飼い続けている猫であれば、まず心配はありませんが、妊娠してから新たに猫を飼うというのは、飼う前の状況がわからないこともあるので、あまりお勧めはできません。
時々、妊婦さんから猫を飼っているけど大丈夫か、と聞かれることがあるので、今回は妊娠と猫について説明しました。
猫を飼っているけど大丈夫かな、と思われる方は参考になさってください。