妊娠中のアレルギー薬について
すっかり花粉が飛ぶ季節になりました。
花粉症で悩まれている妊婦さんから、妊娠中でも使える花粉症の薬について聞かれることも多いので、今回は妊娠中の花粉症の薬について説明したいと思います。
最も使いやすい薬は点鼻薬や点眼薬です。
「ステロイド」が含まれている薬だと少し抵抗があるかもしれませんが、点鼻薬や点眼薬に含まれるステロイドが体に吸収されるのは極めて微量であり、まず赤ちゃんに影響はないと言えます。
そのため、点鼻薬や点眼薬から使い始めるのがスムーズかと思います。
次に内服薬について。
アレルギーを抑える内服薬もいくつかあり、そのほとんどが妊娠中に内服しても問題ないものです。
その中でも、強いて順序をつけるとしたら、昔からある内服薬が、比較的安全なデータが揃っていると言えます。
https://www.amazon.co.jp/Pregnancy-Lactation-English-Gerald-Briggs-ebook/dp/B071D417PS/ref=mp_s_a_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&qid=1552337308&sr=8-1&pi=AC_SX236_SY340_QL65&keywords=drug+in+pregnancy
こちらの本には、妊娠・授乳中の薬に関して1600ページ近いデータが揃っていて、とても参考になるので、そこからデータを持ってきたいと思います。
アレルギー薬としてメジャーなものをあげると、
ポララミン
アレグラ
などがあります。
妊娠中に使う薬を考えるとき、妊婦や赤ちゃんに影響が出ないかという点で考えると、どの薬も影響が出たというデータはありません。
ですので、上にあげた薬は、どれも安心して使ってもらえるのですが、強いて優劣をつけるとすれば、動物実験のデータを参考にすることになります。
動物実験では、人間が使う量の何倍もの薬を投与して、影響が出るかどうかを調べています。
ポララミンやレスタミンは、かなり古い薬で、妊婦さんが使っても問題ない、というデータは多く揃っています。また、動物実験でも問題はありませんでした。
アレロックでも、ほとんど問題になるような影響はありませんでした。
クラリチン、ジルテック、アレグラは比較的新しい薬で、動物実験で大量に投与した場合に影響が出た、という論文はあります。
これらの薬に共通して言える事は、効果は人それぞれ。副作用としての眠気は、新しいものほど出にくい、ということです。
そのため、以前内服していてコレが効く、というのがわかっていれば、まずはそこから始めてみるのも一つの手。
または、日常生活で多少眠気が出ても大丈夫という方は、古い方の薬から試してみる、というのも一つの手になります。
花粉症があまりにも酷くなると、睡眠不足からストレスが強くなったり、疲れが溜まったりしますので、是非かかりつけ医でお薬の相談をなさって下さい。
(耳鼻科や内科の先生の中には、妊娠中は薬を何も出さない、と言い切る先生もいるので、受診前に妊娠中でも処方してもらえるのか確認することをお勧めします)
アフターピルが安くなりました
以前、避妊に失敗した場合の緊急避妊という方法について説明しました。
今回、この緊急避妊の時に飲んでもらうアフターピルという薬にジェネリックが発売されることになりました。
今まで、当院では診察料込で18,000円(税込)だったのですが、今回ジェネリックを採用することで、9,800円(税込)でお渡しすることになりました。
避妊に失敗してしまって、妊娠の心配があるという方は、緊急避妊という方法をご検討ください。
避妊に失敗してから72時間以内に飲むのが効果的、120時間以内でもある程度の効果は期待できます。
薬の効果は飲んだ時だけのもので、将来的な妊娠には一切影響は与えません。
副作用も軽い吐き気程度で済むことがほとんどですので、お気軽にご相談ください。
また、クリニックによっては、緊急避妊が必要になった理由を細かく聞いてくる所もあるようですが、それは落ち着いてから考えればいいことで、そこで受診のハードルを上げてしまうのは本末転倒だと思っています。
まずは、早めに薬を飲むこと。
それが一番大事です。
妊娠中に猫を飼ってもいいの?
トキソプラズマという名前を聞いた事はあるでしょうか?
これは、寄生虫の一種で、とても小さく肉眼では見ることができません。
また、健康な人が感染してもほとんど何も症状がでないため、普段は問題になることはありません。
ただし、妊娠中に感染すると、流産したり、赤ちゃんに影響が出ることがあるため、注意が必要です。
そんなトキソプラズマですが、身近なところでは、猫に感染することがあり、その猫がトキソプラズマをオーシストという形態で糞に排出し、新たな感染源になります。
では、猫を飼っている人が妊娠したら、猫を手放さないといけないのか?
決してそんなことはありません。
というのも、猫がオーシストを排出するのは、トキソプラズマに感染してから3週間程度の間だけだからです。
つまり、3週間以上前からずっと家の中だけで飼い続けて、外の世界と接触したり、生肉を食べたりしていない猫であれば、トキソプラズマを排出する可能性はない、ということです。
(生肉にもトキソプラズマは含まれているため、妊婦さん自身も生焼けの肉やローストビーフなど、赤い部分があるお肉は食べてはいけませんよ)
妊娠前からずっと家の中だけで飼い続けている猫であれば、まず心配はありませんが、妊娠してから新たに猫を飼うというのは、飼う前の状況がわからないこともあるので、あまりお勧めはできません。
時々、妊婦さんから猫を飼っているけど大丈夫か、と聞かれることがあるので、今回は妊娠と猫について説明しました。
猫を飼っているけど大丈夫かな、と思われる方は参考になさってください。
お産直後にミレーナを入れるという選択肢
以前、生理痛に対して
ミレーナ
という治療法があると説明したのですが、今回はそのミレーナを入れる時期についてです。
ミレーナ自体は経腟分娩の経験のある方だと比較的スムーズに入れられるのですが、それは子宮の出口が少し開いていて、ミレーナ挿入時の痛みが少なくて済むからです。
そのため、お産の直後だと余計に子宮の出口が開いているため、より痛みが少なくてミレーナを入れる事ができます。
お産をして2ヶ月くらいしてからミレーナを入れた患者さんは、全く痛みなく挿入できた事もあるくらいです。
生理痛に対してミレーナを使う場合は、保険適応になりますので、1万円前後で入れることが可能であり、5年間は効果が持ちますので、かなりリーズナブルに生理痛を治療することができます。
出産後6週間経過すれば挿入可能ですし、授乳中でも赤ちゃんに影響は出ないので、もしもミレーナを検討されている方は、ご相談下さい。
月経移動について
旅行や試験と月経が重なってしまって困る、という方には月経移動をお勧めしています。
ここでは月経が来てほしくない!!というときに、その月経を後にずらしたり、早めたりすることができるのです。
今回はその方法について説明したいと思います。
まず、早める方法について。
これは、来て欲しくない生理の一つ前の生理が終わるあたりからホルモン剤を10日前後内服すると、その数日後に生理がくる、という飲み方です。
もし、5月の生理を移動させたいのであれば、4月の生理あたりからホルモン剤を飲むことで、5月の生理を少し早める事ができます。
ただ、早める方法は時に失敗することがあるので、より確実性を求めるのであれば、遅らせる方法をお勧めします。
遅らせる場合には、来てほしくない生理の5~7日ほど前からホルモン剤を内服します。内服している間は生理が来なくて、飲み終わって数日してから生理が来ることになります。
そのため、来てほしくない生理の1週間近く前には受診してもらう必要があります。
内服してもらうお薬自体は大きく分けて二種類あります。
中用量ピルと言われるものと、ノアルテンという名前の薬です。
中用量ピルに関しては、副作用として吐き気が出ることがあるので、初めて内服する場合には少し注意が必要です。以前内服したことがあって、キツい副作用が出ない事がわかっていれば大丈夫ですが、もし副作用が心配な時には、大切な用事の時には避けた方がいいかも知れません。また、血栓症という副作用もあるため、40歳以上の方やタバコを吸う方などはリスクを伴う薬になります。
その点、ノアルテンという薬であれば、血栓症のリスクはなく、年齢や喫煙に関係なく内服することができます。
また、吐き気などの副作用も比較的出にくいお薬になっています。
大事な用事に生理が被って困る時には対応可能なことがありますので、お近くの婦人科へご相談ください。