現役産婦人科医の時間外診療

平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

妊娠前に準備しておきたいこと~葉酸について

普段、外来をしていると


妊娠できますか


という質問をされることが、よくあります。


いわゆる不妊症の原因というのは、本当に多岐にわたるので、それらを一つずつチェックしていかないといけないのですが、いざ「妊娠の為の検査」を始めてみると、結果がすべてそろう前に


妊娠しました


といって来られる方が結構多いのです。



そこで、今回は「妊娠を考え始める前」に準備しておきたいことをまとめてみたいと思います。



まずは、


葉酸

これは、ほうれん草の葉っぱから発見されたビタミンB群の1種です。

葉酸は、野菜や柑橘類・レバーなどに多く含まれており、小腸で「モノグルタミン酸」という形で吸収されます。

しかし、これら食品中の葉酸の大部分は「ポリグルタミン酸」という形で存在し、「モノグルタミン酸」として消化吸収されるまでの過程で様々な影響を受けるため、生体利用率は50%以下と言われています。また水溶性ビタミンであるため、調理中に失われやすくなっています。

また、レバーから葉酸を摂取しようとすると、同時にビタミンAも多く摂ることになります。妊娠中にビタミンAを摂りすぎるのはよくないので、レバーの食べすぎには注意しなければなりません。


そのため、食事からの葉酸摂取ではなく、妊娠前から葉酸サプリを摂取することが大事になってきます。そうすることで、赤ちゃんに

神経管閉鎖障害

という先天奇形が生じる確率を下げることができる、と多くの論文で報告されているのです。


神経管閉鎖障害とは

妊娠初期に起こる先天異常のひとつです。

神経管とは、脳や脊髄など中枢神経系のもとになる細胞です。これらが妊娠初期に細胞分裂することで、脳や脊髄を始め、胎児の様々な神経細胞が作り出されます。

この神経管に閉鎖障害が起きた場合は二分脊椎と言います。脊髄の神経組織が脊椎の骨に覆われていないため、足の運動障害や排泄機能に障害がおこることがあります。

二分脊椎は、1万人に5.6人程度の確率と言われています。

また、神経管の上部に閉鎖障害が起きた場合、脳が形成不全となり、無脳症と呼ばれ、流産や死産の確率が高くなります。

葉酸を摂取することで、全ての神経管閉鎖障害を予防できるわけではありませんが、神経管閉鎖障害の発症リスクを軽減する方法のひとつとして葉酸の摂取が薦められています。


・いつから葉酸を摂取すればいいのか


赤ちゃんにとって、器官形成期という体の大事な臓器を作る期間が「妊娠4週から妊娠8週」と言われています。特に、中枢神経系の障害は妊娠7週までに発生するため、妊娠がわかってから葉酸を摂取していたのでは、遅くなってしまう可能性があります。

そのため、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月まで葉酸を摂取することが大切になるので、妊娠を考え始めた時点で葉酸のサプリを飲み始めたいですね。


・1日にどれくらい葉酸を摂取すればいいのか

野菜やレバーに多く含まれる葉酸ですが、熱に弱く、調理の時に50%近くが失われるか、水に溶けやすいため、ゆで汁に溶けだしてしまいます。

そのため、食事だけで必要な葉酸を摂取するのは難しく、また、上で説明した「神経管閉鎖障害」のリスクを下げるデータがあるのは、サプリのみとなっているため、サプリから葉酸を摂る必要があります。

1日に0.4mg=400μgの葉酸をサプリから摂ることで、神経管閉鎖障害のリスクが下げられるため、サプリを選ぶ際には、0.4mgという量を目安にしてください。

ちなみに、摂取量の目安は、1日0.4mgから1mgまでです。以前に神経管閉鎖障害のお子さんを出産したことのある方は1日4~5mgと決められているため、用量をしっかり守りましょう。


・サプリを選ぶポイント その1~葉酸が含まれる量~

上で説明したように、葉酸の必要量は1日0.4mgから1mgまでです。必要量をしっかり守れるサプリを選びましょう。

・サプリを選ぶポイント その2~葉酸の種類~

葉酸にはモノグルタミン型とポリグルタミン型という二つの種類がありますが、ポリグルタミン型は吸収率が低いため、妊娠の為のサプリとしては不適格です。必ず、モノグルタミン型を選びましょう。

そして、モノグルタミン型の葉酸の中にも「天然由来」と「化学物質由来」があります。天然由来は原材料が食品由来ということ。

どうせ飲むなら天然由来の方が安心ですね。

ちなみに、酵母葉酸という名前の葉酸サプリもありますが、神経管閉鎖障害の予防効果があると論文で示されているのは、酵母葉酸ではないので、モノグルタミン型の葉酸を選ぶようにしてくださいね。