妊娠中と授乳中の性器ヘルペスについて
ヘルペスは一度感染してしまうと、痛みは治っても、ヘルペスのウィルス自体はずっと体の中に残り続けてしまいます。
そのため、妊娠前に感染したとしても、妊娠中にヘルペスが再発するのは、よくあるお話。
また、運悪く妊娠少し前にヘルペスをもらってしまい、妊娠初期にヘルペスの痛みが出てしまうこともあります。
特に、初めて症状が出てきた場合のヘルペスは、かなり痛くなることも。
そこで、今回は妊娠中のヘルペス治療について説明したいと思います。
2010年の海外の論文ですが、妊娠中のヘルペス治療薬と赤ちゃんの奇形発生率について、83万7795人の妊婦さんを調査しました。
ヘルペス治療薬(バラシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル)を使用した1804人のうち、2.2%の赤ちゃんに奇形があり、治療薬を使っていない19920人には2.4%に奇形がありました。
妊娠初期にバラシクロビルを使用したグループでは奇形率は3.1%、アシクロビルでは2.0%、ファムシクロビルでは3.8%でした。
(ファムシクロビルが少し高くなっていますが、26人にしか投与していないため、確率が高く出ている可能性はあります)
一般的に、赤ちゃんに奇形が生じる確率は3%前後であるため、妊娠初期にバラシクロビルとアシクロビルを使用しても、赤ちゃんの奇形の確率は上がらないだろう、という結論になります。
また、授乳中にバラシクロビルを内服し、赤ちゃんに授乳した論文もあります。
その論文では、お母さんが抗ヘルペス薬を内服して授乳すると、赤ちゃんにも抗ヘルペス薬が移行するのですが、その量はとても少ないことが示されています。
(授乳によって移行する量は、ヘルペスに感染した赤ちゃんを治療するために使う量の0.2%ほどでした)
このため、授乳中のヘルペス治療にはアシクロビルやバラシクロビルを使ってもいいと考えられています。
ちなみに、妊娠後期にヘルペスの症状が出てしまった場合は、特別に注意が必要です。
分娩の瞬間にヘルペスの病変があると、赤ちゃんに感染するリスクが高くなってしまうため、経腟分娩ではなく帝王切開になることが多いです。
また、分娩1か月以内に初めて感染して初めて症状が出た場合や、分娩1週間以内に再発した場合も、帝王切開が選択肢になるため、注意が必要ですね。