おりものの匂いが気になったら
外来によく来られる患者さんの訴えの中で、おりものの匂いというのは、かなり頻繁にある症状です。
おりものが増える原因としては、カンジダであったり、クラミジアであったり、淋菌であったりと、様々な原因が考えられるのですが、匂いの原因になるのは、その多くが、
細菌性腟症
というものです。
そこで、今回は細菌性腟症についてまとめたいと思います。
腟内には、もともと乳酸菌がいるのが正常な状態なのですが、この正常な乳酸菌が減ってしまい、そのほかの様々な菌が増えてしまうと、細菌性腟症という状態になります。
おりものの匂いを始め、下腹部痛や不正出血の原因になることもあります。
特に「匂い」自体は特徴的なため、一度感染したことがある方であれば、「またなりました」と受診されることも多いです。
治療としては、腟の中に入れる「腟錠」という薬を使うことが多いです。
薬は「クロマイ」と「フラジール」を使うことがほとんど。
何度か繰り返している人であれば「クロマイを下さい」と薬を指名されることも多いです。
ただ、ここで一点だけ注意があります。
冒頭で、腟の中には乳酸菌がいるのが正常と説明したのですが、「クロマイ」という薬は、この正常な乳酸菌すら殺してしまう可能性があるのです。
Ocana V, Silva C, Nader-Macias ME: Antibiotic Susceptibility of Potentially Probiotic Vaginal Lactobacilli. Infect Dis Obstet Gynecol 2006; 1-6
こちらの論文によると、クロマイは10μg/mlという濃度で、乳酸菌の発育をストップしてしまいます。
一方で、フラジールであれば、1000μg/mlという濃度になって初めて乳酸菌の発育をストップするのです。
以上のことから、おりものの匂いが気になるときには、フラジールをお勧めしています。
このフラジール自体、細菌性腟症に保険で使えるようになったのが数年前なので、クロマイをずっと使っている病院もあるとは思いますが、乳酸菌のことを思えば、フラジールの方がいいですよね。
時々、フラジールは効かなくて、クロマイの方が効く、という方もいるので、「クロマイがダメ!!」っていう訳ではないですよ。
ちなみに、フラジールには腟錠だけではなくて、内服薬もあります。
腟錠が苦手、という方もいらっしゃるので、そんな時は内服薬を試してみてくださいね。