避妊や生理痛を軽くする目的でピルを勧めることが多いのですが、副作用としての血栓を心配される方以外に、癌になるんじゃないかっていう心配をされる方がいます。
血栓症に関しては、以前説明したので、今回は癌について説明したいと思います。
まず、よく聞かれるのが乳がんですね。
乳がん
乳がんに関しては、どちらの可能性もあります。つまり、ピルを飲むことで乳がんのリスクがあがるって説明している論文もあれば、ピルを飲んだって乳がんのリスクは上がらないって説明している論文もあるのです。少なくとも、ピルを飲むことで乳がんのリスクを下げられるっていう説はないので、結論としては、
子宮頸がん
これも乳がんと同じで、リスクが上がるっていう論文と、リスクが上がらないっていう論文があります。リスクが上がるっていう論文でも、5年以上ピルを飲んでいたら、リスクが2倍になったっていう程度ですので、こちらも定期的に子宮頸がん検診をしっかり受けていれば、そこまで心配する必要はないかと思います。
ただ、一つ気になるのは、産婦人科じゃない科の開業医の先生が簡単にピルを出しちゃうことですね。もちろん、ピルへのアクセスの良さっていう意味で処方するのはいいと思うんですが、こういったリスクもしっかり説明してもらわないと、ただ出して終わりって投げ出されてる患者さんが時々いるので、それは止めてほしいと思うわけです・・・
と、ここまでピルを飲むことでリスクが上がる可能性のある癌の話をしてきましたが、逆にピルを飲むことでリスクが下げられる癌もあるんですよ!!
それは、卵巣癌と子宮体がんと大腸がんなんです。
卵巣癌
ピルを飲むことで、卵巣がんのリスクを2割~3割は下げられるという論文から、ピルを1年飲めば1割、5年飲めば3割、10年飲めば4割、10年以上飲めば6割も卵巣癌のリスクが下げられる、という論文までいろいろありますが、どれもピルを飲むことで卵巣癌のリスクが下げられる、というものばかりです。
ですので、結論として
ピルによって卵巣癌の確率は下げられる
と言えます。
子宮体がん
子宮体がんに関しても、ピルを飲むことで半分程度までリスクが下げられるという報告が多いです。10年近くピルを飲めば、子宮体がんのリスクを7割も下げられる、という論文もあるくらいなので、卵巣癌と同様に
ピルによって子宮体がんの確率は下げられる
と言えます。
大腸がん
卵巣や子宮の癌がピルである程度予防できるのはわかるのですが、以外にも大腸がんのリスクも下げられるのです。なぜ大腸がんのリスクが下げられるか、その正確な理論はわかっていないのですが、ピルを飲むことで2割~3割は大腸がんのリスクを下げることができます。
以上より、ピルを飲むことで、卵巣癌・子宮体がん・大腸がんは確実にリスクを下げることができますし、子宮頸がんや乳がんのリスクは検診でフォローできるので、ピルを飲むメリットはかなり大きいと思います。
特に卵巣癌に関しては、検診の方法がないため、ピルの恩恵は大きいのではないでしょうか。