平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

女性アスリートとドーピング

競技レベルで活躍している運動選手が生理不順で受診されることがあります。

詳しく聞いてみると、競技の為に過度な食事制限をしていたり、かなり厳しいトレーニングを積んでいるため、数カ月どころか年単位で生理不順が続いている方もいます。

そういった女性アスリートによく見られる問題として、無月経摂食障害・疲労骨折という3つの特徴が指摘されています。


特に、新体操や体操系の競技、陸上長距離やトライアスロンのような持久系の競技で、無月経や疲労骨折が多く見られ、その他の競技に比べて2~3倍確率が高いと言われています。

わかりやすい基準としては、

BMI:17.5kg/㎡未満

という状態が続くと、無月経になりやすく、それが疲労骨折のリスクにつながってきます。


ちなみに、BMIというのは

体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

で計算することができます。身長は「cm」じゃなくて、「m」で計算して下さいね。

身長160㎝、体重50kgなら、50 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = 19.5 となります。


アスリートの方にとって骨折のリスクは出来るだけ避けたいでしょうから、骨密度は一度は測っておいた方がいいと思います。

お近くの整形外科で簡単に測れることが多いので、競技レベルでのアスリートの方は、一度測ってみてくださいね。


実際に骨密度が低下していなくても無月経が続くと骨密度が低下していき疲労骨折のリスクとなってしまうため、ホルモン治療が必要になることが多いです。

その時に心配になるのが、競技とドーピングの関係ですね。

これに関しては、

日本アンチ・ドーピング機構

日本アンチ・ドーピング機構 | Japan Anti-Doping Agency (JADA)


というところが、毎年1月に禁止薬物を発表しているので、ぜひ参考にしてみてください。

婦人科でよく使うピル関係は、ほとんどドーピングには引っかからないので、安心して使ってもらえると思います。

漢方薬は「体に優しい」というイメージがありますが、その中にはドーピングに引っかかるものもあるので注意が必要です。

サプリメントに関しても同様に禁止物質が含まれることがあるので、注意して下さいね。


ちなみに、禁止物質を治療目的で使用しなければならない場合は、治療使用特例というのを申請し、認められれば使用可能となります。それに関しても、先ほどの

日本アンチ・ドーピング機構


日本アンチ・ドーピング機構 | Japan Anti-Doping Agency (JADA)


から申請書をダウンロードできるようになっているので、かかりつけの先生と相談してくださいね。

妊娠中と授乳中の性器ヘルペスについて

ヘルペスは一度感染してしまうと、痛みは治っても、ヘルペスのウィルス自体はずっと体の中に残り続けてしまいます。

 

そのため、妊娠前に感染したとしても、妊娠中にヘルペスが再発するのは、よくあるお話。

 

また、運悪く妊娠少し前にヘルペスをもらってしまい、妊娠初期にヘルペスの痛みが出てしまうこともあります。

 

特に、初めて症状が出てきた場合のヘルペスは、かなり痛くなることも。

 

 

そこで、今回は妊娠中のヘルペス治療について説明したいと思います。

 

 

2010年の海外の論文ですが、妊娠中のヘルペス治療薬と赤ちゃんの奇形発生率について、83万7795人の妊婦さんを調査しました。

 

ヘルペス治療薬(バラシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル)を使用した1804人のうち、2.2%の赤ちゃんに奇形があり、治療薬を使っていない19920人には2.4%に奇形がありました。

 

妊娠初期にバラシクロビルを使用したグループでは奇形率は3.1%、アシクロビルでは2.0%、ファムシクロビルでは3.8%でした。

(ファムシクロビルが少し高くなっていますが、26人にしか投与していないため、確率が高く出ている可能性はあります)

 

一般的に、赤ちゃんに奇形が生じる確率は3%前後であるため、妊娠初期にバラシクロビルとアシクロビルを使用しても、赤ちゃんの奇形の確率は上がらないだろう、という結論になります。

 

また、授乳中にバラシクロビルを内服し、赤ちゃんに授乳した論文もあります。

 

その論文では、お母さんが抗ヘルペス薬を内服して授乳すると、赤ちゃんにも抗ヘルペス薬が移行するのですが、その量はとても少ないことが示されています。

 

(授乳によって移行する量は、ヘルペスに感染した赤ちゃんを治療するために使う量の0.2%ほどでした)

 

このため、授乳中のヘルペス治療にはアシクロビルやバラシクロビルを使ってもいいと考えられています。

 

 

 

ちなみに、妊娠後期にヘルペスの症状が出てしまった場合は、特別に注意が必要です。

 

分娩の瞬間にヘルペスの病変があると、赤ちゃんに感染するリスクが高くなってしまうため、経腟分娩ではなく帝王切開になることが多いです。

 

また、分娩1か月以内に初めて感染して初めて症状が出た場合や、分娩1週間以内に再発した場合も、帝王切開が選択肢になるため、注意が必要ですね。

 

 

 

 

 

 

クリニック開院1年目を振り返って

早いもので、今年の6月に開院して、もう半年が経ちました。

振り返ってみると、合計1200人もの方に受診してもらいました。


それだけ多くの方の悩み相談に乗れたと思うと、感慨深いものがあります。

総合病院で勤務していたころは、時間内にとても多くの患者さんを診ていたので、どうしても時間に追われる事が多かったのですが、開業してからは自分のペースで予約枠を設定できるので、しっかり説明できているかな、と思っています。

幸い、問診票の受診理由に「友人の紹介」や「ご家族の紹介」を選んでいただく患者さんも増えてきました。

今まで総合病院では「受診理由」を確認したこともなかったですし、おそらく「大きい病院だから」「開業医さんから紹介されたか」という理由がほとんどだったと思うので、「自分自身の診療」を認めてもらえるのは、大変ありがたいな、としみじみ思っています。



クリニックの内装は整ったものの、患者さんに説明する資料がまだまだ足りない部分があるので、来年はもう少し整えていき、患者さんが疑問に思っていることを出来るだけ解決できるクリニックづくりを進めていきたいと思います。


また、どうしてもクリニック目線での行動が増えてしまうのですが、患者さん目線で「こうした方がいい」という意見があれば、どんどん取り入れていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。


それでは、良いお年を。

ニキビ治療薬にはご注意を

婦人科にニキビの相談がメインで来られる方はあまりおられないのですが、ピルの相談と一緒にニキビの相談を受けることがあります。

中には、ニキビ治療薬を個人輸入している、と言う方もおられたので、今回は海外のニキビ治療薬について少し説明したいと思います。


ニキビの治療として有効なものであっても、妊娠中に使ってしまうと問題になってしまう薬があるのです。

それは、

アキュテイン


という薬です。

アキュテインというのは商品名なので、他の商品名としては、ロアキュテイン、ソトレット、アムネスティーム、クララビス、イソトロレン、アクノティンという名前が挙げられますが、これらはすべて


イソトレチノイン


という成分が入っているのです。

ニキビの治療薬としてはかなり優秀で、海外ではもっとも使われているニキビ治療薬の一つです。

ただし、このイソトレチノインという成分は、催奇形性といって赤ちゃんに影響を与える物質として、妊娠を考えている方は使ってはいけない薬になっているのです。

妊娠中にイソトレチノインを使用することで、頭蓋・顔面(耳が無かったり、顎が非常に小さくなったり)、胸腺異常、中枢神経の奇形、心奇形などが起きる可能性があるのです。


そのため、海外では、毎月妊娠検査薬で陰性なのを確認した上で使わないといけない薬になっています。


そのことを知らずに海外から個人輸入をして使っている方がいるので、厚生労働省からも注意喚起が出されています。


www.mhlw.go.jp



また、皮膚科の先生が個人輸入して患者さんに使っている可能性もあるため、もしニキビ治療薬を使っている方がいましたら、その薬がどういった薬なのかはしっかり調べた方がいいと思います。


ちなみに、ディフェリンゲルというニキビの薬も、新たに保険で処方されるようになりました。

こちらは、動物実験で経口投与により催奇形性が認められましたが、経皮投与=皮膚に塗るだけであれば、催奇形性が認められなかったため、妊娠に気付かないで使用してもリスクはほとんどないと言えます。

ただ、比較的新しい薬ですので、あえて妊娠がわかってから使うのは避けた方がいいでしょう。


以上、ニキビに対する薬と妊娠について説明しました。

普段から使っている薬にも中止しなければならない可能性もあるため、皮膚科の先生に妊娠の相談はしておくことをお勧めします。

久しぶりの読書感想文

今回読んだのはコチラ


DIVE!! 上 (角川文庫)

DIVE!! 上 (角川文庫)

DIVE!! 下 (角川文庫)

DIVE!! 下 (角川文庫)


高飛び込みに打ち込む中高生を描いた青春小説です。


正直、高飛び込みって全く興味なかったですし、テレビでもほとんど見たことがない競技なので、マイナーすぎて小説も楽しめないかなと思っていたのですが、いい意味で期待を裏切ってくれました。


是非とも、皆さんに読んでみてもらいたいので、あらすじは出来るだけ話さないようにしておきます。


たぶん、「高飛び込み」ってだけで敬遠する人もいると思います。私自身、読み終わった今でも、高飛び込みの技の種類がよくわかっていません。

読んでる途中でも、いろんな技の名前が出てくるのに、さっぱりイメージが沸きません。

それでも十分なほど楽しめるのです。


特に終盤の競技に関しては、机に向かって読んでいたのですが、思わず前のめりになりながら読んでしまいました。

この感覚、何かに似てるなと思ったら・・・



スラムダンクの山王戦!!!

私は号泣しながら読んだのですが、その感動に近いものがありました。


是非ともお勧めです。