平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

分娩予定日はいつですか

妊娠初診の方によく聞かれるのが

予定日はいつですか

という質問です。


そこで、今回は分娩予定日の決め方について説明したいと思います。



排卵した日が妊娠0週0日と勘違いされることが多いのですが、


排卵した日は妊娠2週0日と決められています。


ということは、妊娠1週0日はまだ妊娠もしていない・・・

ここは「産婦人科」を学ぶ医学生が一度は疑問に思う部分ではありますが、

そこは突き詰めないでください。。。


排卵日=妊娠2週0日なんですっ!!!


我々、産婦人科医はそのように刷り込まれているのです。



そして、分娩予定日が妊娠40週0日になります。



多くの場合は、生理が始まってから2週間ほどで排卵することが多いので、最終月経を基準に予定日を計算するのですが、これがずれることがとても多いのです。


というのも、生理の2週間後に排卵せず、1週間、2週間遅れて排卵することは珍しいことではないためです。


そのため、最終月経から計算すれば、もう妊娠8週くらいかなぁ、と思って受診されても、診察してみるとまだ妊娠5週くらいの大きさだった、ということがよく起こります。


これは、赤ちゃんの成長が遅いという問題では無く、排卵が遅かった、ということがほとんどなので、あまり心配する必要はありません。


その後、順調に成長してくれれば、それで全く問題ありませんから。



では、排卵が遅れて妊娠成立した場合には、どのように予定日を決めるのでしょうか。


それは、赤ちゃんの体の大きさが、だいたい妊娠8週から妊娠10週くらいの大きさになった時点で、正確な予定日を決定します。



この週数での赤ちゃんの大きさには、個人差がほとんどなく、その大きさから排卵日を大よそ推定することができるので、それをもとに予定日を決めることになります。



ちなみに、この予定日を決める計算ですが、クリスマスだったりバレンタインデーだったり、自分の誕生日と同じ日になったりすると、勝手に一人で感動したりしています。


まぁ、その日に産まれる確率は高くないんですけどね。

妊娠中のお酒について

妊娠中はお酒やタバコがダメだというのは聞いたことがあると思います。

また、このブログでも妊娠とタバコについて取り上げてきました。




そこで、今回は妊娠とお酒の関係について書きたいと思います。


2009年の厚生労働省の調査では、妊娠中に飲酒した経験のある妊婦さんは8.7%、と言われています。



実際にお酒が与える影響は、


先天異常(特異顔貌、多動や学習障害)

胎児発育不全

胎児脳萎縮

妊婦のうつ症状の悪化

乳児に対する虐待感情を持つ可能性


の確率が増えるのです。


これらは、缶ビール1本でも発症のリスクがあると言われているため、やはり妊娠すると同時に飲酒は控えなければなりません。


もちろん、確率が上がるだけで、絶対起きる訳ではないので、妊娠に気づかずにお酒を飲んでいたとしても、中絶を考えるような話ではありません。


ただ、妊娠がわかっているのに、お酒やタバコを続けるのだけは、辞めたいですよね。


こればっかりは、何か「薬」を使って止められるものではなく、辞めるか辞めないか、本人の気持ち次第です。


周りのお母さんで、「妊娠中、タバコ吸ってた」「妊娠中、お酒飲んでた」という方はいると思います。そして、それでも元気な赤ちゃんが産まれてきたことを誇りのように話す人もいるでしょう。


でも、それは違います。


お母さん自身が、「元気な赤ちゃんが産まれてくる」ハードルを高くしてしまって、たまたま、本当にたまたま元気に産まれてきただけのことです。


たまたま、赤ちゃんに何も影響が出なかっただけです。


そして、もしも「妊娠中のタバコ」や「妊娠中のお酒」が原因で何かが起こったとしても、それを他人に自分から話さないだけです。



赤ちゃんの80年、90年の人生がかかっています。


最初のスタートを最高のものにしてあげてください。

腹筋しすぎたら子宮が出てきちゃう??

ダイエットは永遠の課題ですが、個人的には筋トレが一番ラクかなと思っています。


ランニングやウォーキングは時間がかかるし、やっている間はカロリーが消費されますが、お休みしている間はカロリー消費されません。


その点、筋トレは週に3回程度のトレーニングで大丈夫。テレビを見ながらでも出来るし、トレーニングしていない間も筋肉による基礎代謝が期待できるので、どんどんカロリーが消費されるのです。


ランニングやウォーキング自体が楽しい、という方はそちらをおススメしますが、ダイエットのために走る!という義務感があると長続きしません。

義務感で1時間過ごすよりは、筋トレを10分程度やる方が、よほど楽ですよね。

ダイエットに必要なのは長続きすることですから、ご自分にあった方法を選んでもらいたいと思います。



ということで、最も有効な筋トレは腹筋やスクワットです。


obgyne.hatenablog.com


以前も筋トレをおススメしていたのですが、「筋肉をつけたら太くなる」と心配するのは止めましょう。


筋肉をつけるのはかなり大変です。そして、筋肉がつけば、自然と体全体の脂肪が減って、やせています。

しかも、筋トレを止めれば、あっという間に筋肉は細くなります。



ただ、一点だけ注意があるとすれば、腹筋について。


背筋も同時に鍛えないと腰を痛める、というのは聞いたことがあると思いますが、婦人科医として少し気になるのは

子宮脱


という状態です。

20代~30代の方であればまず大丈夫ですが、60歳前後から少しずつ心配になってくる病気です。



子宮というのは本来は腟の奥に収まっているのですが、子宮を支えている靭帯が弱くなってくると、どんどん腟の中に下りてきてしまって、最終的には腟の外に子宮が出てきてしまうのです。


特に、田舎で農作業をしている女性に見られる状態で、重いものを持つときにお腹に力を入れることが子宮脱の原因になるのです。


お腹に力を入れると、その力の逃げ場が腟の方に向かってしまって、子宮がどんどん腟の方に押し出されていくんですね。


完全に子宮が外に出てしまうと、股の間に子宮が挟まって歩きにくい状態になってしまいますし、出血の原因にもなります。


そこまで行かなくても、腟の中に子宮が下りてくると、「何となく違和感がある」という症状で受診されることもあります。



ですので、そういった状態を防ぐためには「お腹に力を入れる動作は禁止」ということになります。



60歳前後の方に多い、という話をしましたが、まれに出産が原因で子宮が下りてきてしまうこともあります。


本当に子宮が外に出てしまうと、手術をするか、腟の中にリングをいれて子宮が下りてこないようにブロックすることになりますが、軽く下りてくる程度であれば、「筋トレ」をすることで改善が期待できます。


その「筋トレ」は腹筋ではありませんよ、腹筋は逆効果ですからね。


子宮が下りてくるのを防ぐ筋トレは、

骨盤底筋運動


というものです。


簡単に言うと、おならが出そうになった時に我慢する動きが、それに当たります。

ですので、1日に何回もおならを我慢する動きをすれば、それが筋トレになるんです。



もしも、出産を機に腟の中に違和感がある、という方がいれば、この骨盤底筋運動を試してみてくださいね。


ダイエット目的であれば、腹筋は逆効果なので、スクワットをしましょう。

「ついで」検査のおすすめ

皆さん、子宮がん検診は受けていますか。

なかなか「検診」というのは受診のハードルが高いと思います、私自身、しっかり検診を受けているかというと・・・

受けないといけないとは思っているんだけど


そもそも、病院にわざわざ行くのがハードル高いですし、婦人科であれば尚更ですよね。



ただ、そんな中でも「おりものが増えた」「何となくお腹が痛い」「痒みがひどくなってきた」といった理由で受診される方がいて、そういう方に


「ついでに癌検査もどうですか」


と聞いてみると、お願いされることがとても多いのです。



というのも、おりものの検査や腹痛の検査はどうしても内診が必要になることが多くて、そのついでに子宮頸がんの検査であれば、サッと終わるんです。


痛いですか?と聞かれることもありますが、検査自体は柔らかいプラスチックのブラシで子宮表面をこするだけなので、ほとんど痛みはありません。




実際の料金もそれほど高いものではありません。

「子宮頸がん検診」といって、「検診」であればクリニックごとに値段がマチマチなので、3000円とか4000円くらいすることもありますが、不正出血などの症状があって「子宮頸がん検査」=「検査」をするのであれば、保険が使えるので、費用は1000円程度です。


そこに初診料などが加わってきますし、おりもの検査などをしていれば、また値段は変わってきますが、純粋な「子宮頸がん検査」は1000円程度なんです。


思っているより、値段が安いのではないでしょうか。



子宮頸がん検査だけを目的に病院を受診するのは少しハードルが高い、と思っている方、何か婦人科系の症状があれば婦人科を受診したついでに「子宮頸がん検査」を相談してみてくださいね。

帝王切開の吐き気には〇〇が効く

赤ちゃんが逆子であったり、前回帝王切開をしていたり、お産の途中で赤ちゃんが苦しくなったり、と様々な理由で帝王切開をすることがあるのですが、帝王切開中にお母さんが気持ち悪くなってしまうことがあります。

その原因の一つとして、麻酔によって血圧が下がってしまい、気持ち悪くなることがあるのですが、その対策として

しょうが

が効果がある、という論文を見つけたので、今日はそれを紹介したいと思います。


論文は

Zeraati et al.:The Effect of Ginger Extract on the Incidence and Severity of Nausea and Vomiting After Cesarean Section Under Spinal Anesthesia. Anesth Pain Med. 2016 Aug 15;6(5):e38943. eCollection 2016 Oct.


2016年に発表された、「脊椎麻酔にて帝王切開した後の嘔気に対するショウガの効果」というものです。

92人の妊婦さんを2つのグループに分けて、片方は手術1時間前に30mlの水を飲んでもらい、もう一方のグループは30mlの水にショウガの絞り汁を25滴入れて飲んでもらいました。


その結果、帝王切開中に吐き気が出なかったのは、水を飲んだ人たちの48%だったのに対して、ショウガ汁を飲んだ人たちでは76%になったのです。

正直、帝王切開中の吐き気って、ある程度仕方がないものと思っていた部分はあるのですが、実に8割近い人の吐き気が抑えられた、というのはかなり効果的な印象です。


今は開業して帝王切開をすることは無くなってしまいましたが、仲のいい産婦人科医に勧めてみて、その効果を聞いてみたいと思います。


ちなみに、手術前の飲食は禁止になっている病院も多いと思いますので、帝王切開前に自己判断で水分を摂ることはせず、担当の先生としっかり相談してくださいね。