平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

イソフラボンについて

大豆に含まれるイソフラボンが健康にいい、という話を聞くことがありますが、果たして副作用という面ではどうなのでしょうか。

 

イソフラボンには、女性ホルモンに似た作用がある、と言われています。

 

女性ホルモンであるエストロゲンと、イソフラボンの構造が似ていることから、豊胸や更年期症状の改善に有効なのではないか、と言われたりしています。

 

ここで、産婦人科医として心配になるのが、発ガン性との関係です。

 

エストロゲンが関連する癌というものがあるので、女性ホルモンを処方する時には癌のことを考えながら処方することになっています。

 

例えば、更年期症状の改善のためにホルモンを処方する時、何らかの手術で子宮を取った後の女性にはエストロゲンというホルモンだけを処方します。

 

しかし、子宮がある女性にはエストロゲンに加えて、プロゲステロンというホルモンも一緒に処方します。

 

エストロゲン単独では子宮体癌のリスクが増えるため、エストロゲンプロゲステロンを一緒に処方しますが、逆に乳がんエストロゲンプロゲステロンが一緒だとリスクが増えるというデータがあるのです。

 

それほど、エストロゲンと癌の関係は深いため、エストロゲンのような作用をするイソフラボンでも、癌との関係が心配になります。

 

そこで、いろいろ調べて見たところ、イソフラボンと癌との関係を調べた発表がありました。

 

 

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3430.html

 

 

こちらは、約4万人の日本人女性を10年間追跡したデータです。

 

子宮体癌はもともと欧米に多くアジアには少なかったのですが、1990年頃から日本で増え始め、発生率は当時の約2倍になっています。

 

この調査では、豆腐、納豆、味噌などの食品摂取量のアンケート結果から、イソフラボン摂取量の多い群と少ない群に分けて調べました。

 

その結果、イソフラボンの摂取量と癌の発生率はほとんど変わらなかった、という結論が出ました。

 

このデータから言えることは、予防効果もはっきりしないけれど、イソフラボンを摂ることで子宮体癌の心配をしなければならない、という訳でもない、ということです。

 

イソフラボン=エストロゲン様物質だけを摂り続けることは、子宮体癌のリスクになるのでは、という心配はいらない様子ですね。

 

乳がんリスクとの関係については、また次回まとめてみたいと思います。

 

 

クリニック スタッフ募集!

クリニック開業に向けて、スタッフ募集いたします。

 

場所は品川駅から京急で10分ほどの位置にあり、最寄駅から徒歩3分なので、沿線の方には通いやすい場所かと思います。

 

ゼロからのクリニック作りに協力していただける看護師さん、事務さんを募集いたします。

 

婦人科での勤務経験がなくても全く問題ありません。

 

一番求めるスキルは

 

笑顔

 

です。

 

 

様々な理由でクリニックを受診される患者さんにとって、張り詰めた気持ちでは、なかなか疑問に思っていることを全て話すことは出来ないと思います。

 

そのため、クリニックのスタッフには、何よりも患者さんの緊張を解きほぐすような笑顔、心遣いを求めています。

 

知識や経験が全くなくても、当院でイチから覚えてもらえれば大丈夫です。

 

 

また、パートでの勤務なので、子育てをしながら、介護をしながら、久しぶりの復職でリハビリがてら、という方も歓迎です。

 

17日には正式な位置など御報告できると思いますので、興味のある方はよろしくお願いします。

 

 

ついに電子カルテが決まりました

クリニック開業に向けて、様々な電子カルテを検討してきました

 

総合病院では、当たり前になっている電子カルテも開業医さんでは、普及率が30%程とのこと。

 

それでも、紙カルテに記載して、処方箋を書いて、それを受付に持って行って、それから保険点数を計算して、患者さんにお会計、としていると、とても時間がかかってしまいます。

 

また、一昔前には「医者がパソコン画面ばかり見て患者さんの顔を見ない」ということがよく言われていました。

 

それは、パソコンに慣れていない年代のお医者さんならではのエピソードだと思っています。

 

パソコンに慣れている私たちの年代になると、紙に文字を書くより、パソコンに打ち込む方がよほどスムーズで、患者さんの話に集中できると思っています。

 

というわけで、1ヶ月近くかけて、合計7社さんの電子カルテを見させていただきました。

 

まず最初に見させてもらったのはクラウドを活用した全て無料の電子カルテ

 

無料の理由は、カルテから得られる処方の情報など、いわゆるビッグデータを活用できるから、無料とのことでした。

 

これから先の医療では、それが主流になるのかもしれませんが、まだまだ駆け出しの段階で、そこに乗るのは危険と判断しました。

 

いくらセキュリティがしっかりしてるとは言われても、やはり患者さんに関わるデータがどこかに利用されているのは、まだ抵抗があります。

 

 

次に検討したのは、全国的にも有名な大手の会社さんが作っている電子カルテ。値段も結構するようなのですが、大手さんなので安心して使えるかな、と思いました。ただ、どうしてもデザインが古い、、、Windows XP という感じがしてしまって、Windows 10に慣れてきている感覚から言うと、違和感が凄かったです。

 

実は、このデザイン面、他のカルテ会社さんも厳しいところが多かったです。

 

こうやって書いていると、デザインくらい大した問題じゃないように思われるかもしれませし、私自身も実際見るまではデザインなんて重要視してませんでした。

 

それでも、実際に見てみると、XP感に対する違和感が凄いのです。これほどデザインの影響が大きいとは思っていませんでした。

 

と言うわけで、デザイン面だけで2社に絞られ、最後の最後まで悩みました。

 

1番のネックは、患者さんの超音波画像をいかにスムーズにカルテに取り込めて、なおかつ過去の超音波画像がサクサクと見れるかどうか、という点でした。

 

その点で、考えに考え抜いて、やっと決まりました!!!

 

ちなみに、こちらがXP感を脱却した電子カルテの画像です

 

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早速、よく使う処方薬や注射などなど、スムーズに診察が進むようにコツコツと初期設定を頑張っているのですが、、、

 

これが大変っ!!

 

今まであらかじめ設定された電子カルテを使ってきたので、そんなに考えずに薬を選んでたのですが、全く0の状態から薬を選んで行くのが、こんなに大変だとは思いませんでした、、、

 

とはいえ、自分のカルテを作っていくのは楽しくていいですね。

 

この1週間ほどでおおよその初期設定を済ませないといけないので、コツコツ作業していきたいと思います。

性病に感染した時の犯人探し

おりものが増えたり、下腹部が痛くなったり、いろんな症状で検査してみたところ、クラミジアや淋菌などの性感染症が原因だった、ということはよくあります。

 

また、デリケートゾーンが痛くて受診した方を診察すると、診た瞬間にヘルペスだとわかることもあります。

 

そういった時、「やっぱりそうか」と納得される方もいれば、「彼氏が浮気したんですね」と聞かれることがあるのですが、、、

 

正直、性病に関しては誰からもらったのかはわからないことが多いです。

 

確かに感染してから1週間前後で症状が出ることが多いので、クラミジアや淋菌に感染しておりものが増えたのかもしれません。

 

しかし、おりものが増えた原因は雑菌感染であって、クラミジアや淋菌にはもっと前に感染していた可能性もあるのです。

 

 また、ヘルペスも感染して数日で痛みが出てくることが多いのですが、まれに初めて感染した時は何も症状が出なくて、体調を崩したり、疲れたタイミングで痛みが出てくることがあります。

 

このように、「症状」と「感染時期」が離れている可能性は十分あり得る訳です。

 

 

もちろん、今までに1人の相手としか性行為がないのであれば、その相手からもらったことになりますが、過去に2人以上との経験があるのであれば、もう誰からもらったのかはわからなくなります。

 

そのため、診断がついたら、まずは治療。そして、クラミジアや淋菌であれば、相手にも検査してもらって、お互いが感染していない、ということが確認できるまでは性行為を控えてください。

 

時々、クラミジアや淋菌の検査を勧めても、症状がないから大丈夫、と言って検査をしない彼氏さんもいるみたいですが、症状が全く出ないこともあるので、ちゃんと検査してもらって下さいね。

 

中絶手術について思うこと

時々、医師ではない方と話して驚かれることがあるのですが、我々医師と言うのは、医学部時代に全ての科を勉強し、卒業する時点で、何でも好きな科を選んでいいことになっています。

 

厳密には、医学部を卒業した後の2年間は全ての科を学ぶ期間であり、それが終わった時点で、自分が学びたい科を選ぶことになります。

 

そのため、医学部に入りさえすれば、何科の医師にでもなれるのです。

 

そして、何科を選んだとしても、途中で違う科に変わるのも自由となっているので、私自身が

 

「明日から脳神経外科医になる!」

 

と宣言すれば、私は脳神経外科医になるのです。

もちろん、知識や技術が伴わなければ、何の役にも立たないのですが、その医師が何科の医師であるかは、自己申告みたいなものなのです。

 

もちろん、その科の

 

専門医

 

であれば、何年も診察しないとなれないのですが。

 

では、私が卒業した時点で、なぜ産婦人科を選んだか。

 

それは、やはり妊婦さんはもとより、生まれてくる赤ちゃんの命を救える科だったからです。

 

おめでとうございます

 

と言える唯一の科だとは良く言いますが、その魅力はとても大きいのです。

 

 

そんな仕事の中で、どうしても避けて通れない、ツライ仕事が

 

中絶手術

 

になります。

 

 

もちろん、母体の健康を損なう病気があったり、いろいろな事情があって、諦めることになるのですが、避妊をしっかりしていなかった、妊娠するとは思っていなかった、などの不注意による中絶がとても多いのが現状です。

 

 

それでも、中絶希望の方が来られると、こちらとしてはその手術をするしか選択肢はないと思っています。

 

中絶の相談に来られた患者さんの中には、私の対応がとても淡白だと思われる方もいるかもしれません。

 

しかし、実際に産んで、その先に何年も続く育児に私は1mmも関与することができないのです。

 

もちろん、産んでほしい気持ちはヤマヤマです。妊婦健診で、赤ちゃんが元気に動いているのを診るのは、本当に楽しい瞬間です。

 

でも、時折ニュースで虐待事件を見て心を痛めていると、本当に産むことだけが幸せなのかと、考えさせられるのです。

 

 

医学的に出産のリスクを考えている方であれば、持ちうる知識と経験をお伝えします。

その上で出産するかどうか決めてもらいたいと思います。

 

ただ、経済的理由であったり、父親となるであろう相手の問題であったり、プライベートな部分ばかりは関わることができません。

 

 

そこは、決断された方の意思を尊重するしかないんだと思っています。

 

 

 

中絶が無くなることはないと思います。

 

少しでも中絶が減ることが理想ではありますし、何より生まれてくる赤ちゃんが幸せな人生を送ってもらうことが、産婦人科医としての願いでもあります。

 

 

中絶を希望してこられる患者さんに対して、こちらも複雑な想いを抱いている、という話でした。