平和島レディースクリニック

診察室では説明しきれないことを中心に

妊娠できるか調べたい!!!不妊症じゃないかな・・・

特別、避妊をしっかりしてるわけでもないのに、なかなか妊娠しない方がいます。

多くの場合は、たまたまタイミングが合ってないだけなのですが、やはり何か原因がないか気になると思います。

そこで、不妊症かも、と思った時に、まず調べる検査について、今回は説明したいと思います。

基礎体温測定

基礎体温計という特別な体温計を購入してもらって、毎朝体温を測り、グラフにします。


一般的な体温計より細かい温度まで測れないといけないので、少しだけ特殊な体温計になっています。


毎日体温を測ってグラフにするのが面倒だという方は測るだけでiPhoneやアンドロイドに体温を自動転送して、勝手にグラフにしてくれる優れものもあります。



多少、体温がガタガタしたり、1日くらい計測し忘れたりしても大丈夫です。


完成した体温グラフが、大まかに低温と高温の二つに分かれているかどうか、高温が10日以上、安定して続いてるかどうかをチェックします。

超音波検査

子宮筋腫や卵巣の腫れがないか確認します。

また、卵巣の中でうまく排卵に向けて卵胞が育っているかどうかもチェックできます。

卵胞というのは、生理の後に徐々に大きくなっていき、だいたい2㎝ほどになると破裂して、中にある卵子が外に出て、妊娠の備えます。


ホルモン検査

卵巣から出るホルモンや、卵巣を刺激するために頭から出るホルモンなどを測定します。

生理初日から数えて3〜7日目に採血することで、卵巣を刺激するホルモンがしっかり出ているかどうかをチェックします。

また、体温が高くなる高温期の真ん中あたりで採血して、高温を維持するためのホルモンが十分出ているかもチェックします。


クラミジア検査

採血でクラミジア抗体と言うのを調べます。

いわゆる性病検査で調べることが多いのは、子宮そのものにクラミジアが感染しているかを調べる事が多いです。

しかし、妊娠できるかどうかで大事なのは、子宮そのものより、卵管のあたりまでクラミジアが感染しているかどうか、ということです。




卵管が詰まっていると、妊娠しづらい原因になるからです。

子宮そのものにクラミジアが見つからなくても、卵管の方にはクラミジアがいる可能性を考えると、子宮そのものだけをチェックするのは、やや不十分。

そこで、このクラミジア抗体というのを採血で調べます。

クラミジア抗体というのは、クラミジアそのものに抵抗する成分。

一度でもクラミジアが体内に入ると、抗体というのができるため、過去の感染を調べることもできます。

感染初期に増えるタイプの抗体や、一度でも感染するとずっと存在し続ける抗体もあるので、それらを調べて、治療の必要があるかどうかを判断します。


卵管通過検査


卵管が通っているかどうかを調べる検査です。


精液検査

意外と見落とされがちなのが、この精液検査。

なかなか妊娠できない不妊症の原因のうち、女性に原因がある確率と、男性に原因がある確率は、ほぼ同じと言われています。

不妊症というと女性中心で治療するイメージもあるかと思いますが、男性にも原因があることは多く、2人で治療していく気持ちがなければ、うまくいきません。

精液検査をして、精子の数や、動いている精子の割合を調べます。





以上のような検査が

妊娠できるかどうか


を調べたい方には受けてもらう検査になります。



基礎体温は受診しなくてもできる検査ですし、クラミジアに関しては早期発見、早期治療が鍵になります。

ぜひ一度はチェックしてみてくださいね。

手術をすることになった方へ 執刀医の探し方

卵巣が腫れていたり、子宮筋腫が見つかったり、婦人科の手術が必要になった方へ、執刀医の探し方について、思うところを書きたいと思います。


特に、内視鏡を使った腹腔鏡手術について取り上げたいと思います。


子宮筋腫や卵巣の腫れを取り出すためには、一昔前はお腹を大きく切って取り出すしかありませんでした。


しかし、内視鏡と言って、非常に細いカメラが発明されて以来、お腹を大きく切るのではなく、2㎝程度の傷を何か所かつけるだけで手術が出来るようになってきました。


お腹を何か所か2㎝程度切り、内視鏡というカメラを入れたり、操作のための鉗子という棒を入れたりして、内視鏡で映し出すモニターを見ながら、手術ができるのです。


そうして、子宮筋腫や卵巣の腫れを取った後、同じく2㎝程度の傷から体の外へ取り出して手術は終了します。


例えば2㎝以上ある子宮筋腫とかですと、お腹の中で細かく砕いたり、2㎝程度の傷から細かく刻みながら取り出したりと出来るので、多少大きな子宮筋腫でも取り出せます。


では、この内視鏡の手術は誰でもできるかというと、当然そのような簡単な手術ではありません。


モニターを見ながらの手術ですので、奥行きがよくわからなかったり、糸を結ぶにも鉗子という棒を使って上手く結ばないといけないので、相当のトレーニングが必要になってきます。

何年もトレーニングをして、技術が認められて初めて、

内視鏡専門医


という資格を取ることができます。



そのため、内視鏡での手術を考えている方は、病院のHPで医師のプロフィールを確認して

内視鏡専門医


の資格があるかどうかを確認してください。


もしくは、以下の学会のHPでも、専門医の資格を持った医師を確認することはできます。


service.kktcs.co.jp



普通の開腹手術であれば、産婦人科医としてある程度経験年数を積むだけで出来るようになりますが、内視鏡手術だけはそれに特化したトレーニングをしないと上手くなりません。


ですので、手術が必要と言われて、内視鏡手術が選択肢に上がる方は、内視鏡専門医を探してみてくださいね。

双子の赤ちゃん、一卵性なの?二卵性なの?

街中で双子のベビーカー見かけると、ついつい目で追っちゃいますよね。

それで、赤ちゃんの顔を見て、


あぁ、やっぱりソックリだー

一卵性なのかなぁ


なんて、勝手に想像しちゃうわけです。



外来で妊娠しましたって初診で来た患者さんを診察して、赤ちゃんの袋が2個見えた時は、思わずこちらも嬉しくなってしまいます。


医学的には、双子の妊娠は早産のリスクがあったり、いろいろ大変なんですが、それでもやっぱり双子ってワクワクしちゃいますよね。



自然に双子になる確率はおよそ1%と言われています。


そんな双子で、まず気になるのが一卵性なのか、二卵性なのかってことですよね。




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上の図を見てください


産婦人科医が妊婦健診で判断しているのは、図の下側にある赤ちゃんのお部屋がいくつに分かれているか、という部分です。

極端な話、一卵性か二卵性かは重要ではなく、この

部屋がいくつに分かれているか


を超音波で見ることが全てです。


赤ちゃんの部屋が完全に2つにわかれているのが

二絨毛膜二羊膜


全く同じ部屋に入っているのが

一絨毛膜一羊膜


同じ部屋なんだけど、薄い壁で仕切られているのが

一絨毛膜二羊膜


と呼びます。


上の図の左二つの見え方であれば、確実に一卵性なのですが、一番右のように完全に部屋が2つにわかれている場合、一卵性のことも二卵性のこともあるのです。


一卵性の双子である確率がそもそも低いので、赤ちゃんの部屋が二つに分かれていれば二卵性の確率が高いのですが、100%ではない、ということですね。


そのため、病院では

「赤ちゃんのお部屋が二つありますよ」

と言われただけで、

「あ、うちの双子は二卵性なんだ」

と思って、子供たちが大きくなっても

「二卵性なのにソックリね、やっぱり双子よね」

と言われている場合もあると思います、本当は一卵性なのに。



このように、一卵性か二卵性なのかは、意外と判断が難しい、というお話しでした。

卵巣が腫れていると言われた方へ 卵巣嚢腫・卵巣腫瘍

お腹が痛みや検診をきっかけに、卵巣が腫れていると言われた方は、その後の方針が、大きく二通りに分かれます。


一つ目は、まだ小さいので経過を診ましょう、という方針。

卵巣自体は3センチ、4センチ程度なら簡単に腫れるので、2.3ヶ月したら、自然に縮んでいることも多いのです。

そのため、まずは様子を見るという方針を取ることになります。



もう一つは、手術をしましょうという方針。

5センチ、6センチを超えてくると、自然に縮む可能性は低くなってきます。

また、それくらいの大きさになると、腫れている部分がクルッと捻れて、激痛を引き起こすことがあります。

捻じれて激痛が起きると、救急車で運ばれて緊急手術となることがほとんどです。



そのため、前もって手術をしましょうとオススメするのです。

ただ、卵巣の腫れ自体は症状がないことも多く、いきなり手術と言われて、寝耳に水という方も沢山いらっしゃいます。



そこで、今回は卵巣の腫れの中でも、

奇形腫

皮様嚢腫

デルモイド

と呼ばれるものについて説明します。



これらは呼び方が違うだけで、全て同じものです。

腫れている卵巣の中に、脂肪とか髪の毛とか歯が入ってたりする腫瘍です。


ブラックジャックという漫画に出てくる、ピノ子というキャラクターは、この腫瘍の中に入っていた臓器をつなぎ合わせて造られた女の子なんです。

と言って、ピノ子を例に出しても、あまり伝わらないことも多くなってきましたが、、、



それはさておき、この腫瘍は、飲み薬や注射では治せません。

手術をして取るしか治療法がないのです。

ですので、見つかった時点で手術をオススメすることも多いです。


手術の方法

今では、お腹を大きく開ける開腹手術より、小さい傷だけで手術できる、内視鏡手術が主流です。

お臍の高さより上にまで腫瘍が大きくなっていると、内視鏡の手術は少し難しくなってきますが、それより小さければ、まず大丈夫です。

ただし、手術の前の検査で、良性腫瘍ではなく、悪性が疑われる場合には、最初から開腹手術をすることもあります。


卵巣は取らないといけないの?

閉経間近の人であれば、腫れている方の卵巣ごと取ることが多いですが、若い方であれば出来るだけ腫れている部分だけを取って、正常な卵巣は残します。

ただ、あまり大きく腫れている場合は、正常な卵巣を残せないこともあります。


腫れている所を取れば終わりなの?

卵巣腫瘍というのは、いざ取ってみないと、本当に良性か悪性かの診断はつけられません。

腫れている部分を顕微鏡で見て初めて診断できるのです。

ただ、小さい腫瘍ならかなりの確率で良性と言えるでしょう。

良性腫瘍であれば、そこを取って終わりです。

再発することもあるので、定期的な経過観察は必要になります。





卵巣の腫れ、特に皮様嚢腫と呼ばれる物について説明しました。


実際には手術の前の検査結果次第で手術のやり方も変わってきますので、主治医の先生とよく相談してみてください。

おすすめの産婦人科の見つけ方

何でも診れる総合病院なら問題ないんですが、時々他のクリニックにお手伝いに行くと、そこのクリニックでは対応できない患者さんが、たまにいらっしゃいます。


そういう時には、対応できる病院を紹介するのですが、患者さんから


「おススメの産婦人科はどこですか?」


と聞かれることが非常に多いのです。



そして、この答えがとても難しい。


自分が一緒に働いたことがある先生であれば、この先生がおススメと言えるのですが、一度も働いたことがない先生だと、正直おススメできるかどうか、全くわからないのです。


そこで、みなさんが受診する病院を探すときに、どこに注意してみればいいか説明したいと思います。


まずは、病院のHPにある医師のプロフィールを確認してください。


産婦人科で言えば、

産婦人科専門医


は必須です。この専門医を持っていない先生が開業しているクリニックは怪しいです。


それから、専門医ではなく

○○学会所属


という記載には騙されないでください。


いろいろな学会は、数万円の年会費や入会費を払えば、だれでも入れます。

所属学会が記載されていても、その分野での経験が豊富とは限りません。



手術をする病院を探すときにも、この専門医の確認は大切です。


腹腔鏡手術という内視鏡を使った手術をしてくれる病院を探す時、腹腔鏡専門医の資格を持っている先生であれば、まず間違いはありません。


この腹腔鏡専門医の資格を取るためには、論文を書くことはもとより、技術審査として実際に手術をしている様子を録画したビデオ審査もあるのです。

そのため、腹腔鏡専門医の資格を持っている先生は、技術的にしっかり保証されていると言えます。


このように、その先生のプロフィールを見るだけでも、情報は得られますので、参考にしてみてください。



あとは、

相性の問題


です。


いくら腹腔鏡専門医の資格を持っていて技術的に優れていても、聞いたことにしっかり答えてくれないような先生だと信頼関係は築けないですよね。

こればっかりは、人間と人間の関係ですから、合う合わないがあります。


皆さんが、ご自身の考えに合った先生に出会えますように。